えかき と りゅうの え
むかし むかし。
あるところに えをかくのが じょうずな おとこが おりました。
おとこは みやこでいちばんの えかきとなり
あれをかいてくれ これをかいてくれと たのまれておりました。
あるひ えかきのやしきに ひとりのろうじんが やってきました。
「りゅうの えを かいてくれんかね」
(こんなじいさんに おれのえが わかるのかな)
そうおもいながらも えかきは りゅうのえを かきあげました。
すると ろうじんは
「わしにも えを かかせてくれんかね」といいます。
えかきから おおきなしろいかみと えふでをうけとった ろうじんは
それはそれは みごとな りゅうのえを かきあげました。
だれが どうみても えかきより じょうずです。
おどろく えかきの めのまえで りゅうは かみからぬけだし
ろうじんを せなかにのせ おおぞらへと とびさってしまいました。
ろうじんは せんにんさまだったのです。
そのひから えかきは かんがえこむように なりました。
「おれも えからとびだすりゅうを かいてみたいな」
だけど えかきがいくらがんばっても かれのかいたりゅうは かみからでてきません。
あるひ えかきは おもいつきました。
「そうだ りゅうは あのじいさんが つれていってしまったんだ」
「だから いくら りゅうをかいても かみからでてこないのかもしれない」
「よし それならおれは くものうえにいる かみなりさまを かくことに しよう」
それから えかきは おおきなおてらの おおきなおどうを かりて
くるひも くるひも かみなりさまだけを かきつづけていました。
そして
「できた!」
おどうの なかから えかきのこえが きこえたとたん
ごろごろ どーん!
とつぜん てんから すごいおとがなりひびき おどうに かみなりが おちました。
にわそうじをしていた おしょうさんと こぼうずたちが おどうに はいってみると
そこには おおきなしろいかみと すみのついたままの えふでが あるだけで
えかきの すがたは どこにもありません。
おしょうさんは みやこのひとたちに
「えからでてきた かみなりさまが えかきを てんにつれさってしまったのだ」
といっています。
おしまい