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<200種類の野菜と共に> トモタカファーム 関屋智誉さん

(6月13日インタビュー)

以前、お話を聞かせていただいた料理家のわたなべいずみさんのイベントで食べたサラダケールがすごくおいしかったんです。

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作っていらっしゃるのは
鹿児島県大崎町にある8個の畑で有機の西洋野菜を作られている「トモタカファーム」さん。代表は関屋智誉さん

いずみさんのアトリエの隣に住んでいらっしゃったので、たまたまの縁にびっくり。すぐにお話を聞かせていただくお願いをしました。


現在、年間と通して約200種類を栽培されています。
(西洋野菜とは?ズッキーニ・ロメインレタス・コールラビと言えば、ああ!と想像できるかと思います。)

200種類・・・ですか。野菜ってそんなに種類があったんだ、って驚きですが、それらはどこに出荷されているんだろう。

➖ここ、大隅半島のスーパーや野菜がたくさん置いてある物産館ではトモタカファームさんの名前は見たことがないのですが。主にどこに出荷されていますか?

以下、関屋さんの言葉は「」の部分です。

「ほとんどレストラン。今日はこれから島津重富荘に直接配達ですよ。」

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マナーハウス島津重富荘。鹿児島市にある庭園がきれいな高級フレンチレストランです。(東京からの庭園好きのお客様をお連れしたいと思ったことがあるのですが、定休日と重なり行けなかった。そういう特別な時ではないと行けない店)


➖あまり家庭料理にはなじみがない野菜が多いですね。
「最初は普通の野菜作ってました、基本有機です。
トモタカファームを始めて2年目くらいからFacebookを始めたんです。
投稿を見てくれていた、鹿児島市のレストランから取引したいと連絡が。
こういう野菜が欲しいんだけど。とオーダーされたのが西洋野菜でした。
そんな声をかけてもらって作り始めたんですが、知らない野菜も多かったです。」

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➖では、お客様のリクエストで作っているということですか?
「だいたいはその方が多いですね。お客様からこの時期に合う、こんな色が欲しいっていう問い合わせいただいてから調べたりすることもあります。
前は知らない野菜が多くて苦労しました、笑。
でも自分で食べてみたいっていう野菜もありますよ。
西洋野菜の栽培方法はほとんど独学です。」

➖なるほど!需要と供給がハッキリとしていて、なんだか無駄がなくていいですね!(これは私の考えですが、大きな意味で地球にとってもいいような気がします。)
「あと、一人で作業しているため、いかに効率よくやるかっていうのを考えるので、私の営農の基本は1本植えたらたくさん取れるっていうことなんです。ピーマンとかナスとか1本植えたらずっと取れますよね。」

確かに、
サラダケールも取ったらまだ出てくるし。いかに狭い場所でたくさん効率よく採れるかってことが重要なようです。

トモタカファームさんは鹿児島県内のレストランの取引が多いです。
現在では30件(県外含む)ほどとのことで、この野菜の希少価値をわかっているレストランが鹿児島にそんなにあることが個人的にはうれしい。

➖普通のご家庭に販売はされたことがありますか?
「道の駅などに出したことはあるんですが、売れ残ると処分品になるし、それはやっぱり悲しいんです。レストランなら数が指定されているから、その分だけ収穫すればいいですしね、だから地元の方々、一人一人というよりも、お店を通して食べてもらいたいんです。あのお店の料理はこの辺のお店と違うよね?と感じてもらいたい。」

農業と一言で言っても、本当にたくさんの生産者さんがいて一人一人がそれぞれに思いがあり、目指すところが違う。


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左:小ナスのフェアリーテイルという品種 小さいので、1本丸ごと包丁で切り目を入れて扇上に広げたりといろいろ使いやすいサイズ
右:白ナス
「結婚式やパーティで隣の人と野菜の色がちがう、ってことがあってもいいんじゃないかと思うんです。そのテーブルが、全体が料理で整えばそれでいいんじゃないかって」
とてもステキな発想だと思います!


サラリーマン時代

➖トモタカファームとしては5年目ということですが、その前から野菜は作っていたんですか?
「埼玉で照明器具のメーカーでサラリーマンをしていました。主にホテルのシャンデリア等のメンテナンスを担当してました。3.11 …震災以降、蛍光灯の需要が落ちたんですが、その時中国のLEDの勢いがあったんですね。働いていた会社はその時LEDに追いついていなかったんです。」

私もあの時は東京に住んでいて、”あの風景”を経験しています。

東京の計画停電もあり、街からネオンというか灯火が少なくなり暗くなり、大きな宣伝看板を照らすあかりも消され、街を彩る色の明かりがしばらくの期間なくなりました。ビルディング、電車の車内すらも暗くなり、それらの風景はとても印象的に残っている。

そしてあの時一気にLEDの流れに。

結局、関屋さんが働いていた会社は閉業。震災前から閉じる話が出ていたようで、関屋さんの20年のサラリーマン生活も終わりました。
同じくらいの年月で趣味で続いていたのが、家庭菜園。

➖野菜の栽培を始めたきっかけを教えてください。
「マンションのベランダにゴーヤを植えたのが最初でした。テレビで見たグリーカーテンが涼しそうに見えたんです。ゴーヤが実り、それがおいしくて!その後ナスとかトマトとかどんどん増えていって、ベランダいっぱいになって。」

➖やっぱり自分で育てたという付加価値もあって、さらにおいしくなりますよね!でもベランダいっぱいってそりゃまたすごいですね。

「はい、やっぱりベランダでの植木鉢やプランターでは限界があったので、大地である畑で栽培したいと思っていた時に荒川の河川敷の畑と出会ったんです。それが出会いです。」

そして関屋さんは趣味ではあったけど本格的に野菜を育て始めます。そのころからずっと有機栽培でしたが、西洋野菜ではなくて家庭菜園で植える普通の野菜でした。

退職されてから、半年ほど営農の研修をされています。

➖栽培方法は他に誰かの指導がありましたか?
「荒川の河川敷で出会ったおばさんですね。”昔の人はこう言ったもんだ”がその方の口癖で、実際に本格的に農業をやって、確かにその通りだなと納得する事が多いです。ビジネス的な面を指導してくれた、農業研修所の農家さんもいました。」


始まりは無人販売

➖話は戻り、20年のサラリーマン生活が終わったのが当時45歳。それからどのような日々でしたか?
「失職したものの、畑の野菜はどんどんできてくるわけです。
収入もないのでひとまず売ってみようかと・・・無人販売。」

➖おお!なるほど!
「思った以上の売れ行きだったんです。その時に初めて自分が作った野菜がお金になるということを知りました。でもスペース的なこと、このまま埼玉で畑をやることに何かと不都合が出てきて、鹿児島に戻ることにしたんです。」

関屋さんは東京生まれで、中学、高校が鹿児島県。畑がある大崎町にお婆さんが住んでいらっしゃり、その縁で埼玉を離れることに。大崎町には1級建築士の関屋さんのお父さんが家を設計した新築の家があり、ここにはお婆さんがリタイア後に住む予定でしたが、住んで2年弱で癌でお亡くなりになりました。

➖やっぱり鹿児島で農業ってしやすいですか?
「雨がねー・・・。豪雨が年々ひどくなってきてますし、なかなか難しいところがあります。」

西洋野菜は日本の気候に合わないものが多いですが、関屋さんは一つ一つの野菜たちにそれぞれに調整やいろんな工夫をして栽培されています。
有機農法と言っても多少は薬を使用するけど、害虫も年々変わるし、ネットを使ったり直接採ったりとなかなか大変そう。

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バジル。丁寧に遮光ネットが施してあります。暑い季節になるにつれてバジルは葉が硬くなってしまいます。でもご覧のようにトモタカファームさんのバジルは関屋さんとの蜜月なので、柔らかくて香りが良いです。


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オイスターリーフ、初見です。関屋さんが一枚差し出してくれたので、食べてみました。ん?え?おいしい!と心から言えないこの味…困った、感想に困った!
生牡蠣の風味があるため、オイスターリーフと呼ばれています、と関屋さんがニコニコしながら説明をしてくれました。えー!確かに磯の風味!
そして一枚がかなりの高額!(なんとなく内緒にしておきます)


➖それでも一人で作業をされているから、サラリーマンの時より気が楽だったりしませんか?
「大変ですよ、笑。最初は円形脱毛症になりました。
今も時々頭がおかしくなりますよ。1年がとにかく早いんです。
トマトって夏の野菜じゃないですか、1月の寒い時にトマトのことを考えないといけないくて(種まき等)。
9月、暑い時に冬の野菜の白菜の種まきとか考えないといけない。
そうなるとあっというまに1年が終わっていくんです。
今はコツというか、力を抜いていい場面がわかってきたので前ほどではない。なんでもそうですが、失敗をたくさん重ねてどんどんわかってくるものです。でも、まだまだわからない事は山ほどありますよ。」

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「この支柱をこの数だけ立てるだけでも気が狂いそうになりました、笑。」

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関屋さんは仕事がとても丁寧です。私はたくさんの畑を見てきたわけではないですが、そう半ば確信的に思いました。いかに自分が効率よく作業ができるかっていうのを常に考えていらっしゃるのがわかります。

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初めて知りました、パドロン。シシトウのようなピーマンと言った方がいいのかな。スペインではビールのつまみの定番で、素揚げで食べるとかなりおいしいとのことです。私は畑で生で食べたんですが、それでも香りが高くておいしかったです。

同じ方向が向けるやりがい

➖農業って本当に大変なことがが多いうえに、お一人での作業ですが、それでも作り続けられるのはなぜでしょうか?サラリーマンって天気にも左右されないし。
「サラリーマンの時は、ずっとメーカー勤務だったから、
お客さんに商品を売ってもその後の直接の声がどうしても聞きづらかったんですよ。
でも今は、お店のお客様へ野菜を売るまでは要望や希望を重視するのは当然だけど、そのお客様の店に客として食べに行くと今度は立場が逆転するので、栽培人として店主さんにこれはこうした方がいいかも、とか、使い方など、ついさっきまでは目上の立場が一気に逆転して意見できる場面があります。
そして、食べに来るお客さんの為に店主さんと同じ方向を向いて、お互いに向上して行けるということが会社員時代とは違うまさに一つのやりがいになっています。」

➖お客さんと同じ方向が向けるってとてもすてきです!ところで、日々大変そうですがお休みってありますか?
「雨の日はやはり畑に行けないので作業は休みです。それでも野菜を忘れる日は無いですが、野菜から忘れられる日が無い様に日々早起きして、管理していますよ。」

家の窓辺からここに集まる鳥たちを眺めながら、コーヒーを飲む時間が癒しタイムなんだそうです。

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来双船よりご案内です

関屋さんは普段、お一人で作業をされていますが、やはり人手が欲しい時はお友達に手伝いをもらうそうです。そこで、農業に興味がある方で、週末だけでも関屋さんの作業を手伝ってくれる方を募集できないかなと思ってます。代わりに、出荷できないB級品の野菜をお持ち帰り。プラス、関屋さんからの簡単な指導を受けることもできます。(関屋さんからも了承済み)

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ですが、人が集まりにくい状況となってしまいました。
取材をさせていただいてから、この記事を書き上げるまでちょっと時間がかかってしまっていますが、まず鹿児島市内でクラスターがおき、それがほぼ県内全土に一気に広がってしまいました。
そして追い討ち・・・大雨です。熊本・人吉市ほどの被害はなかったのですが、崖崩れが多発しているうえ、台風シーズンに入るので道路事情が一変することがあります。日々流動的で、なかなか先を決めることができない状態ですが、いつかご案内できたらと願っています。



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