『リスクを生きる』を手がかりに、未来を見ると?
「アフターコロナ」「ポストコロナ」というのは、コロナ禍が始まってからずっと言われてきました。
とはいえ、未だに終わりは見えず、先行きも不透明。そんな状態では、今後のことは考えにくい感じではないでしょうか?
とはいえ、着々と時間は過ぎ、また環境も厳しくなっているのは確かのよう。
そこで、本書『リスクを生きる』を手がかりにして、私たちの未来について、少し考えてみたいです。
著者は、フランス文学者・元大学の先生である内田樹先生と、
感染症の医師である岩田健太郎先生。このお二人の対話集です。
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本書の要旨を一言で言うと、
「不条理な世の中で生きていく(生き抜く)には、粘り強さ・めげない根性のような、ある種のハードボイル的な生き方が必要」。
ちなみに、ハードボイルドとは、感情に流されず、精神的・肉体的にタフな人のこと、をいいます。
そして、この要旨は、こうも言い換えられています。
コロナ禍が突然起きるような世界は、不条理であるので、その不条理さを受け入れて、それでも、限定的にであれ、できることはあると考えて対処する、のがこの世界での生存戦略と考える。
本書では、「不条理」という言葉がしばしば出てきます。なぜかというと、コロナを巡る言説は大きく分けると、「条理論」と「不条理論」とに分かれるから。
用語の理解が大切なので、いちおう確認しておきましょう。
「条理」とは、コロナもペストも、偶然ではなく、背後に秩序や摂理が働いている、と考えること。
「不条理」とは、感染症をはじめとして、世の中で起こることの多くは、確率や傾向はあるが、偶然、不確かである、と考えること。
要は、立場は偶然か必然か、と2通りあるけれど、著者らは、偶然と考える。
そして、そのように偶然に起きたコロナ後の世界で生きていくには、
「枠組み・モードの切り替え」が重要になる、と考えます。
この「枠組み・モードの切り替え」とは、前例や過去の成功体験にこだわらず、思考や動作など、自分にまつわるすべてを、その都度、切り替える。別人になる。自分を変えていく。
やってみなきゃわからない、答えがないなら、やるしかない。
それが不条理を生きる道しるべとなる。
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結論はシンプルですが、お二人ともかなりの博学なので、話題が広範囲に及びます。要旨以外にも、読んでいて気になる部分がいくつもありました。
ちなみに、目次です。
第1章 感染症が衝く社会の急所
第2章 査定といじめの相似構造
第3章 不条理を生きる
結局、コロナ後の世界も、コロナ前の世界の課題を引きずっています。場合によっては、増幅されたものもあるかもしれません。
だからこそ、安定した期間が長く、柔軟に変化することが苦手になってきた私たちも、そろそろ、偶然の禍、不条理から早く抜け出すために行動する時期に来ているのだと思います。
今回は本全体の要旨を、続いて、何回かに分けて、個人的に気になった箇所について、
シェアいたします。