実践! 哲学対話:お酒を片手に語り明かそう(2023.3.21)イベントレポート
こんにちは、学問バーKisi 店長の豆腐です。
今回は久々のイベントレポートということで、3/21に行われたイベント「実践! 哲学対話:お酒を片手に語り明かそう」のレポートをお送りします。
日替わりバーテンダーを務めてくださったのは、東京大学教養学部教養学科超域文化科学分科現代思想コースに所属しておられる青木門斗さんです。
目の前に置かれた問いをめぐって、その場にいる人同士で思ったこと考えたことを述べ合うーー。
言ってしまえば「たったそれだけ」の、ごくシンプルな営みが哲学対話です。
正直なところ、最初は不安でもありました。
なるべく哲学の専門的な用語を排し、誰にでもわかる言葉でお互いの意見や感想を語り合う。
それは、ともすれば物事の表面をなぞるばかりで深みのない会話に終始して、いわゆる「学術」に普段から取り組んである人たちからすると物足りない結果になるのではないか、という小さな懸念はどうしてもあったからです。
当店は曲がりなりにも「学問バー」、深い専門性を有する方や、そうでなくとも知的刺激を求める方が多く集まる場ではあり、そのニーズにきちんと応える結果となるかどうかは、やはり気にしないわけにはいきませんでした。
当日は、哲学にまったく馴染みのない方から、大学院で哲学を専攻しておられる方まで、実に幅広い面々が集まりました。
知識のレベルも問いや議論の経験値もまったく違う人たちが集まるこの場が、破綻せずにきちんと対話の場として成立するのか?
青木さんとやりとりしつつ準備を進めるなかで、当日までには不安というほどのものはなくなっていましたが、やはりどこか身構えた気持ちでいる自分を感じてはいました。
しかし、結論から言ってしまえば、こうした懸念は不要でした。
参加された誰しもがきちんと自分の思いや考えを述べ、それを真摯な態度で受け止める、そうしたフラットな対話の場が、確かにそこには現出していました。
それは、一つにはやはり、日替わりバーテンダーの青木さんのファシリテーターとしての高い力量ゆえーーつねに全体に目を配り、そこにいる全員が対等に語り合えるように場を整える力はさすがの一言でしたーーであったと思います。
しかしそれと同時に印象的だったのが、哲学を普段から専門としている方々からたびたび聞かれた「アカデミアの哲学とは全く離れたところで生活している人たちとフラットに語り合う経験は、やはり大切だと再認識した」という言葉でした。
ある意味では共通言語を持たない人たちと、その壁を超えるべく真摯に言葉を尽くして語り合う、その経験がいわゆる「専門家」にとっても手触りのある意義を持つということは、哲学対話そのものの有用性をはっきりと示しているように思いました。
もちろん、その有用性がきちんと発揮されるかどうかは、専門性なるものが意義を持つかどうかと同じように、ある種の条件が満たされているかどうかにかかってくる部分があるかもしれません。
ただ、哲学対話が必ずしも哲学の皮を被った浅薄な営み(実はそういう印象を持たざるを得なかった経験が過去にあり……)に終始しないことは、今回のイベントではっきりと認識できたように思います。
青木さん、この度はありがとうございました!
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