ポストコロニアル文学と出会う:アルジェリアのフランス語小説紹介(2023.3.29)イベントレポート
こんにちは、学問バーKisi 店長の豆腐です。
今回は3/29に行われたイベント「ポストコロニアル文学と出会う:アルジェリアのフランス語小説紹介」のレポートをお送りします。
日替わりバーテンダーを務めてくださったのは、東京大学フランス語フランス文学専修課程に所属しておられるヤマグチさんです。
フランス文学を専攻する課程に所属しておられながら、アルジェリア文学を探求しておられるヤマグチさん。
確かによく考えてみると、アルジェリア文学ってどこで研究できるんだろう……? アフリカ文学を扱う学科がある大学というのは、肌感覚ではありますが、おそらく日本国内にそうそうないようにも思います。
当日ヤマグチさんは、まずアルジェリアという国の概観、旧植民地としてのアルジェリアの複雑な言語状況について語った上で、その土壌から生まれたアルジェリア文学の名作を紹介してくださいました。
ヤマグチさんの軽快ながらたいへん内容の充実した語りに、来店されたお客さんは誰も彼も釘づけで、ヤマグチさんがいまだ学部生(しかも今春から4年生!)であることに驚きつつも、話に熱心に耳を傾けておられました。
当日おもに紹介されたのは、以下の3作品です。
個別の作品についてどのような話が披露されたかについては、とても僕の手に余るのでここでは省きます。
その代わりと言ってはなんですが、個人的に非常に印象に残ったヤマグチさんご発言を、ここではご紹介したいと思います。
僕はこれまで、いわゆる純文学作品を読んだ後に、それを心から「面白い!」と思えたことがぶっちゃけ一度もありません。
なんだかわかったようなわからなかったような……いったいこの作品は何を描いているんだ? そもそもこれってどんな話だったっけ?
なんだかモヤモヤとした読後感を得たのち、その本を二度開くことはほぼなく、本棚の奥に押し込んでしまうなり古本屋に二束三文で売り払ってしまうなり、というオチを迎えることがほとんどでした。
しかしヤマグチさんに言わせれば、「文学作品は3度、4度と読んでいってようやく面白さが浮き彫りになってくるものであって、1度や2度読んで面白いと思えることはほぼない」とのこと。
1度目はとりあえず読み通すので精一杯。2度目でようやく筋が把握できて話の全体像が見えてきたり、モノによってはちょっと面白さがわかってきたり。そしてそこから3度目、4度目と読んでいくとあら不思議、今まで見えてこなかった面白さがどんどん見えてきて、その作品が名作たる所以が理解できてくる……というのです。なんならこれがほぼ当たり前です、と。
ヤマグチさん自身、アルジェリア文学にのめり込むようになったのは、大学のレポートを書くにあたって、アシア・ジェバールの作品をやむを得ず「再読」したことがきっかけになったとのこと。
1度目読んだ時はさっぱり面白さがわからなかったアシア・ジェバールの作品が、2回目読んだ時はあら不思議、以前は見えなかった面白さがどんどん浮き彫りになってきて、その感覚がやみつきになったのだそうです。
これは僕にとって衝撃的かつ大いに励まされる事実でした。
文学作品って、1回読んだだけじゃ理解できなくって当たり前なんだ! 面白さがわからなかったのは別にセンスがないからとか頭が悪いからとかって話じゃなかったんだ!
もしかしたら、あの作品もあの作品も、もう一度(あるいは二度、三度)読んでみたら、初めて読んだときには見えなかった何かが見えてくるかもしれない。
そんなふうに思ったら、臆病にならずに色々読んでみようか、という気持ちが自然と湧き起こりました。
あのイベントから受け取ったものは、当然のことながらお客さんによってそれぞれだったと思いますが、すっかり文学から離れて久しい私にとっては、文学を今ひとたび身近なものに感じさせていただいたという意味で、非常に有意義なイベントでした。
他の皆さんはあの日のイベントから、果たしてどんなものを受け取って帰られたんでしょうか……?
ヤマグチさん、この度はありがとうございました!
以下の有料部分では、日替わりバーテンダーのヤマグチさんに執筆いただいたレポートの全文を掲載しております。
大変アツく、読み応えのある、素晴らしい文章をご執筆いただきました。
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