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きしぉう博士のアジア研究ノート

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きしぉう博士が書いたアジア研究や歴史学関連の2020年10月から2021年1月までの有料記事の全てが読めるマガジンです。
アジア研究、特に東南アジア研究の前線の話がかじれます。 それから、大手の出版局・大学出版局から本を…
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#世界史

講義用ノート コミュニティ形成の東南アジア史(1)シリーズ概論

本業です。シンガポール国立大で教えている大学2・3年生向けの「東南アジア史入門」の授業をコミュニティ形成史として作り直し、日本語の講義用ノートを作る計画です。ちびちびやります。域内の研究もできるだけピックアップしていきますが、東南アジア研究の系譜的には、ビクトール・リバーマン → マイトリ・アウントゥイン → 土屋、あるいはD.G.Eホール → オリバー・ウォルターズ → レイナルド・イレート → 土屋です。なので、基本的にはミシガン大及びコーネル大系列の伝統に基づいて(多少

コミュニティ形成の東南アジア史(4)古典的国家の分裂と再統合、アユタヤの勃興 14世紀から16世紀頃まで

「NUSでやってる東南アジア史入門の日本語版講義用ノートを作るぜ!」と息巻きつつ、しばらく放置していた「コミュニティ形成の東南アジア史」の第4回目を書きます。 前回までのコミュニティ形成の東南アジア史(1)シリーズ概論. https://note.com/kishotsuchiya/n/n0efb8957dc94?magazine_key=ma29b33ae93fc (2)地形、基層文化、神話体系. https://note.com/kishotsuchiya/n/n89

書評/世界史:ウェスタッド「冷戦:ワールドヒストリー」

英語版は2017年、日本語版は今年の7月に発売されたオッド・アルネ・ウェスタッドの「冷戦:ワールドヒストリー」を批評します。本の概要まで無料、冷戦研究史を踏まえた今後への期待などを含めた筆者の批評部分を有料にします。最後まで読みたいという方はマガジンへのご登録をお願いします。 先に書いておくと、20世紀と私達の生きてる今への文脈を理解したい人は、絶対読んで損はしない本です。ただ、「冷戦」という概念自体を問うという姿勢を取ってる私達のような歴史家から見ると、この本は「入門に過

ポストコロニアル vs. コロニアルスタディーズ

便宜上、自己紹介するときなど、わかりやすさを重視して「ポストコロニアルスタディーズやってます」と言います。けれど、厳密には「ポストコロニアル」と言ってしまうとこの学術運動が関わっている問題をあやふやにしてしまうという不備があります。誤解を生む可能性はあるけれど、「コロニアルスタディーズ」(植民地研究、あるいは植民地主義研究)と呼んだほうが正確で、より現在の問題にコミットした運動として認識できます。 こういう発言自体、「ポストモダン」ではあるのだけれど、英語の「ポスト~」とい

世界史 / 書評:ビクトール・リーバーマンの「Strange Parallels」。21世紀歴史学の最重要書

ビクトール・リーバーマンの「Strange Parallels: Southeast in Global Context, c. 800-1830」は、歴史学の業界では今のところ今世紀の最重要書と考えられている。(英語の書評でもJournal of Asian Studies誌上でのラウンドテーブルでも読んでみるとよい。)ただ、2巻で合計約1800頁もある上、リーバーマン先生の文章ってけっこう単調なので、全部読んだ人は少ないと思う。日本語訳も、出すのは相当大変だろうと思う。で