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ホテルのコーヒーをおかわりできない側の人間

共に、我が臆病な自尊心と、尊大な羞恥心との所為である。

中島敦『山月記』

週の始め頃、Twitterで帝国ホテルのコーヒーが話題になっていた。

そういえば私は、ホテルのラウンジでコーヒーを飲んだことがない。
何かきっかけがなければ、今後も行くことはないだろう。
そして、そんなきっかけはおそらく自分から作らなければない。

ということで行くことにした。
ただすぐに行ける範囲内のホテルラウンジでは高くてもコーヒー1杯900円だったので、完全に同じシチュエーションとはいかない。

田舎で2,500円のコーヒーを飲むにはどこへ行けばいいんだ。

いつも業務スーパーのインスタントコーヒーを飲んでいる身からすれば、900円でもかなりのグレードアップなのだが。

それはさておき、いざホテルのカフェに行こうとすると服装が気になる。

その後カラオケに行くつもりだったので、あまりフォーマルな格好だとそっちで浮く。
かと言ってトレーナーにスニーカーで行くのもなぁ。

しかし毎日柄シャツにジーパンで生活している人間なので、綺麗めカジュアルといえる服ももっていない。
公務員を辞めた時に「もう戻るまい」という決意も込めて、スーツやブラウスは処分してしまったのだ。

結局、最適解ではないと思うが、Tシャツにジャケットを羽織って出かけた。
ホテルマンは靴や時計を見て客のレベルをはかるらしいが、Apple WatchとクタクタのNew Balanceはどんな評価になるんだ。

ドレスコードはないとホームページで確認したうえで、ビクビクしながら行ったが、案内係の対応は丁寧だった。(内心は分からないが)
無事にコーヒーを注文。

クッキーがついてきて「うれし〜い!」となったのだが、写真に入っていなかった。

そして、あの台詞がきた。

「おかわりもできますので、お声かけください」

そう、おかわり問題である。

もともとのツイートは2,500円は高く思えるがおかわりできる、おかわりすれば1杯の単価は下がるという話だった。
しかし「それってどうなん?」と物議を醸したのである。

素敵な空間代も込みの価格なんだからガバガバおかわりして1杯の単価下げようとするな、そういう客はホテルの想定外だろ的な。

とはいえ、ホテル側がサービスとしておかわりを提供しているのなら、客が勝手におかわりNGとするのも変な話だ。
しかし、では何杯までが常識の範囲で、何杯からはホテル側も嫌がるのかは分からない。

結局私がどうしたのかというと……。
おかわりは、できなかった。

みみっちいやつだと思われたくなかったからです。
ミスドのコーヒーは絶対におかわりするのに、倍以上払ってるホテルのコーヒーをおかわりできないの、何?

Twitterをきっかけにホテルでコーヒーしばくという体験をできたけどTwitterのせいでおかわりを遠慮してしまうとか、なにがなんだか。

服装考えたり、おかわりするか迷ったり、過剰な自意識に振り回される1日になってしまった。

買おう。
ホテルに自信をもっていける服を。
なろう。
ホテルで自信をもってコーヒーおかわりできる人間に。

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