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人生にも、捨てターンをください。『リバー、流れないでよ』感想

一日生きることは、一歩進むことでありたい

湯川秀樹

映画『リバー、流れないでよ』を観た。
ポスターだけ見て勝手にシリアス作品だと思っていたのだが、コメディかつ少しSFで、とても好みの作品だった。

以下、ネタバレ感想あり。

ループものはこれまでにもいくつか触れてきたが、それがたったの2分間とというのが面白い。
「120秒で何ができる?」と思う一方で、意外に長くも感じる絶妙な時間だ。

そして面白かったのが、やはりループに対する登場人物のリアルな反応だ。
なんというか、このような感じになるよなという。

風呂が初期位置のスギヤマが自分のスマホを取るようにお願いしたのに、誰も動かないシーンはウケた。
120秒も後半になると、「このターンではちょっと無理だな」という諦めも生じるだろう。

これが怖いところで、人間が頑張れる理由の1つは、1分1秒がもう決して戻らないからなのだ。
「今やらなくちゃ」と思うからこそ、重い腰を上げられる時もあるだろう。
「次のターンでいいや」と思ったら、そうはいかない。

一方で、何度でも繰り返せる、人生のタイムラインには残らない不思議な時間があったら素敵だと思う。

結果的にはこのループ、貴船だけが巻き込まれた「なかったことになるはずの時間」が、登場人物に良い変化を与えているのが良い。

ノミヤとクスミは殴り合いにも発展したが、腹を割って話せたし、連載に疲れていた作家は新しい気付きを得る。

ループの原因である(と思われていた)主人公の恋愛感情に、実は誰もが「先へ進みたくない」「この瞬間が続いてほしい」と思っていたことが重なる。
その流れが気持ちいい。

旅先でふと「これが続けばいいのに」と思う瞬間は、きっと誰にでもある。
旅先に限らず、なんとなく人生をストップさせたい、ちょっと息継ぎをしたい瞬間は誰にでもあるはずなのだ。

それが2分間のループというめちゃくちゃな形ではあるものの、叶った。
それは羨ましい。(もちろん初期位置次第ではある)

人生が1回きりで繰り返せないから、タクはフランスに行きたいのだ。

人生が1回きりだから、間違えたくないし、後悔したくない。
だから迷う。

でも人生が1回きりじゃなかったら、もっと色々できるのかもしれない。
知り合いに片っ端から連絡して、ライブのチケットを譲ってもらうとか。

基本的には、生きることは前進でありたい。
私もそう思いたい。
それでも時々、止まってみるのも許してよ。
そう思う映画だった。

長くもなく、軽く見られるので本当にオススメの映画だ。
そしてこの映画で、久保史緒里さんの顔と名前を覚えました。
かわいすぎる。
未来人顔だ。
この人にタイムパトロール役を振ったの天才すぎる。


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