公立病院改革3-28【債務一括償還の危機】〈2006年〉東北170床 公立F病院
ここまでの流れを整理すると。
コンサルによる業績改善の模索
→ 夕張危機が発生
→ 構成市が焦りだす
→ ボスが公設民営提案、構成市が検討
→ 構成市が公設民営を断念、完全民営化か廃止を希望
この流れの中で、民営化か廃止の二択になったわけだが。
廃止は絶対にできない事情があった。
もちろん一つには雇用問題、述べてきた「消滅による失職」問題も大きい。
しかし、もう一つ決定的なのが「医療機関廃止による債務の一括償還義務」問題であった。
当時、病院建設に係る企業債借入が28億円残っていたが、この借入金は「医療施設建設のための起債」である。
この場合、医療施設の運営を辞めたり、建物を他の目的に流用したりすると、起債を「一括償還」しないといけなくなる。
起債や民間向けの国庫補助金等は、資金の目的外利用の禁止(廃止も、資金の目的外利用に含む)を定めている。
これに抵触すれば、地方自治体に限らず、我々の民間クライアントでも補助金返還するケースがある。
加えて、夕張危機で急に総務省が目を光らせ始めた、銀行からの一時借入金約17億円もある。
こちらは、期末には一括償還しなければならず、与信状況などが大変動したから借換はできない。
この起債分、一時借入金分の同時償還を実施することになったら、おそらく構成市は破綻自治体となる。
特に大きいほうの構成市は、計算上、破綻自治体になるという。
つまり、第二の夕張である。
これを避けるためには、「廃止する」という選択肢はない。
もう、民設民営(完全民営化)する以外にないのである。
行政人は、民設民営という。
世間的には、完全民営化のことだ。
会計や法律の世界では、経営委譲とか経営譲渡などの言い方が馴染む。
ただ大前提として、「この病院を、補助金等なしでいいから経営してみたい」という医療機関を見つけなければならない。
この医療機関を探してくることが、本件最大のミッションであり、僕の次の仕事であった。
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