シュークリーム
私は歌を歌っている。
小さな頃から歌うことが好きだった。
経緯を話すと長くなるので割愛していくが、中学生の時にミュージカル部に所属した。
とにかく歌うことがどんどん好きになり、喉を痛めることはしない、喉にいいことはなんなのだろうか。
そんなことばかり思っていた。
あのストイックさを返して欲しい。
話を戻そう。
ある年の夏休み。
夏休みでも部活はある。
青春だった。
普段の学校は嫌いだった。
ただ、部活が好きだった。
休みの日でも学校に行くのがたまらなかった。
たまらなく楽しかった。
夏休みの練習には卒業生の先輩方がやってきて、あーだこーだダメ出しをしてくれた。
その内容はもとより、私は差し入れが待ち遠しかった。
学校で、おやつを食べられる。
たまらない。
たまらなく嬉しかった。
伝統を重んじる学校だったからなのか、毎年受け継がれてきた差し入れがあった。
ヒロタのシューアイスだ。
小さな頃からみんな大好き。
ヒロタのシューアイスだ。
アイスクリームケースの中に顔を突っ込みながら買ってもらっていたあのシューアイスだ。
そんなシューアイスを学校で食べられるなんて。
すごいことだ。
ところがある時のこと。
やってきた先輩方が持ってきてくださった箱はヒロタじゃなかった。
他の学年の先輩と被るのを懸念したのかもしれないし、改革を巻き起こそうとしたのかもしれない。
そうか、改革だ。
その時はきた。
私の目に飛び込んできたのは、シュークリームだ。
コージーコーナーのジャンボシュークリームだ。
それまで見たことはあったのか、食べたことはあったのか。
覚えていない。
ただ、恒例行事シューアイスではない、でっかいシュークリームだ。
戸惑いを隠せない。
シュークリームがこんなに大きくていいのだろうか。
太ってしまう、太ってしまうよ。
シューアイスも太る。
だろう、厳密にいえば。
こんな大きなシュークリーム食べられるだろうか…
一人自問自答を繰り返す私の横で秀才の友達が言い放った。
コージーコーナーのシュークリームって、喉にいいんだよね!
え
え?
え??
そうなの?
そうなの??
確かに言われてみればあのトロッとしたカスタードクリームのまろやかさと、あの量。
そして、しっとりとしたシューの皮。
喉に良さそうだ。
そうだ、これは薬だ。
いただこう。
いただきます。
…おいしすぎるじゃないか
声がよく出るきがするー!!!!
よく出るー!!!!
それから、何十年の時が過ぎた。
私はライブ前に、シュークリームを食べる。
生クリームが入っているのではなく、カスタードクリームオンリーのシュークリームだ。
コージーコーナーのでなくてもいい。
手に入らなければ、とろけるプリンでも、カスタード鯛焼きでも、クリームパンでもなんでも良くなっている。
楽屋でおもむろにシュークリームを食べると大概、え、今食べるの?と驚かれる。
恐らく多くのアーティストは歌う前にシュークリームを食べない。
ここで医学博士が登場して、そんなのはおかしい!というかもしれないが、そんなことは聞いていない。
人間の脳というものは、良くも悪くもなかなか素敵にできているものだ。
どんな食べ物も喉にいい悪いには、個人差があるだろう。
そうだ、そうなのだ。
私はもう身も心も完全に支配されている。
シュークリームは喉にいい。
と。
多くのアスリートがルーティンを持っているように。
あなたがモーニングルーティンを持っているように。
私のライブルーティン。
一番最近のライブ前シュークリーム。
シューアラクレーム。
ちなみにお気付きだろうか。
シーチキンマヨネーズも喉にいい。
そう、それも、私流。
その話しはまたいつか。
(いや、特に何もエピソードはない。かもしれない)
……………………
リラックスといいイメージというのはとても大切だな。ということですね。
効能には個人差がありますので、試してみて、違うなと思ったらおやめください。ね!
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