【R18】それを恋を呼ぶなら 第7話「君のそばにいたいから」
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新しい朝が来て、夜になって、八月の真ん中になった。僕は、僕と彼女がいるこの家の敷地から外へ遊びに行くのをすっぱりやめた。彼女はどこにも行かない。だから僕もここにいる。
秘密の遊戯はしめやかに続いていた。彼女の秘密の核心は温かく濡れ、甘い吐息はますます甘くなり、僕の股間は固くなったままで、どうしようもない。
彼女が起きてこない日があった。いつものように僕が覗きに行くと、ベッドで寝ているのだ。
どうしたんだろう。具合が悪いのかな。でも呼ばれないと部屋の中に入れない。それは僕が勝手に決めたルールだったけれど、僕にとっては絶対だった。
立ち去るべきか、それとも、何もできないとわかっていながら、部屋の外で待機しているべきか。僕は待機する方を選んだ。どうせどこにいようとも、僕の頭の中は彼女でいっぱいなのだ。だったら寝ている彼女を見つめ続けていた方がはるかに良い。
「ねえ。光輝くん。そこにいる?」
彼女が呼んだ。心なしか声に力がない。
「います。ここにいます」
「来て。こっちへ来て」
呼んでくれた。部屋に入り、いそいそとベッドのそばへ行く。彼女は毛布を被って顔だけを出していた。いつもよりも唇がちょっと白っぽい。
「具合が悪いの?」
「うん。ちょっと」
血圧が、と言った。毛布がごそごそ動いたと思ったら、彼女の手が現れた。腕を掴まれ、
「そこに座って」
「ここに?」
「そう。ベッドの端に。立っていたら疲れちゃうでしょう」
そんなことはないって胸を張る。意味のない虚勢だ。彼女に見つめられたら、僕のくだらない強がりはあっけなく消えた。ベッドの端っこにおとなしく腰を下ろす。
手は握られたままだ。どきどきしてくる。何か言うべきなのか、彼女はおしゃべりをしたいのかどうなのか。そういえば、普通の会話をしたことがなかった。
聞きたいことはいっぱいあった。あり過ぎて何から聞いたらよいのかわかないぐらいいっぱいあった。たとえば…たとえば、伯父さんは、深夜になぜ彼女の部屋に来るのか。二人で何をしているのか、とかだ。
伯父さんと沙耶さんは親子なんだから、深夜だろうがどうだろうが、いつ来たっておかしくはない。おかしくはないのに、何かおかしい。でも聞けない。聞いたらいけない気がしていた。だから聞かない。聞けなかった。
「ねえ。光輝くん」
「なに」
「こっちへ来ない?」
「こっちって?」
「毛布の中に」
「えっ…と」
「服を脱いで、来て」
ええと。どういうことだ。服を脱ぐって?
「服をぜんぶ脱いで、毛布の中に、わたしの横に来て」
「そ、それは」
「見ちゃだめ。わたしも見ないから」
うう。どうしよう。彼女の言葉は絶対だ。見ないと言った宣言どおりに彼女は目を閉じている。だから僕はTシャツを脱いでジーンズを脱いだ。
「脱いだ?」
「うん。脱いだ」
「全部よ。はだかになるのよ」
「…」
僕の意思はどうあれ、彼女の言葉は絶対だ。意を決してパンツも脱いだ。もう何も脱ぐものがない。
「脱いだ?」
「うん。ぜんぶ脱いだよ」
「来て。毛布をめくってはだめ。めくらないで端っこから潜り込んで来て」
「うん。わかった」
「見たらだめよ」
「うん」
言われたとおりに、ちょっとだけ毛布を持ち上げ、ベッドとの隙間にまず足を入れ、横になりながら潜り込んでいく。
「わたしにくっついて。見ないでね」
ああっ。思わず声が出た。見ないでと彼女が言った理由が、凄まじい衝撃と共にわかった。
彼女は、毛布の中の沙耶さんは、服を着ていなかった。裸だった。
すべすべした肌の感触が、くっついた僕の体に伝わってくる。もっと感じたくてもっとくっついてみる。温かい。僕はとっても幸せだった。
手探りで、なめらかな肩を撫で、撫でながら下に…その手を優しく捕まえられた。
「ごめんね。今日はだめなの」
「ああ。そうだね」
しまった。そうだった。彼女は体調が良くないんだ。だから寝ているのに。
「ごめんなさい。沙耶さん」
「いいの。わたしはいいの」
「うん」
「つらい?」
「えっ」
「わたしのからだに、触らせてあげられないから」
「…」
答える前に考える。僕は、確かに彼女に触りたい。いつものようにエッチなことしたい。でもそれは彼女に喜んでもらいたいからだ。だから僕は彼女にそう答えた。すると彼女は、
「そうなんだ」
そう言った。意外そうな感じの声だった。違う答えを期待されていたのか。だったら僕は失敗した。しかし嘘はついていない。嘘は言っていないけれど、僕の股間のものは理屈抜きにストレートに正直だったので、彼女に気づかれないように、腰をそうっと引っ込めた。
彼女は上を向いて寝ている。握った僕の手を、なめらかなお腹のちょっと上のあたりに置いている。僕は、空いている方の手を彼女の太もものあたりに置いた。動かさない。撫でたり触りたくても我慢した。
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第8話へ続く
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