【R18】それを恋を呼ぶなら 第8話「君が好きだから」
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その日からしばらくして、また彼女の体調が悪いときがあった。ベッドの寝ている彼女に呼ばれ、この前のように裸になるように言われ、この前のように、横たわった彼女のそばに丸裸になって潜り込んでくっついてみる。沙耶さんはこの前のように、何も着ていなかった。
じっと動かずに、ふたりでくっついていたら、
「もうすぐ、お別れだね」
ぽつんと、彼女の唇がそう言った。驚いた僕は、毛布を剥いで跳ね起きようとした。
「だめ!」
きつい声で叱られてしまい、また横になる。でも、体を起こした瞬間に見てしまったのは彼女には言わなかった。
「ねえ沙耶さん。お別れって、どういうことなの」
「聞いていないの?」
「うん」
「叔母さんと光輝くんはここをを出ておじいちゃんの家に行くんだって。お父さんから聞いたよ」
「そんな…」
そんなこと聞いていない。寝耳に水だ。
「僕は聞いていないよ」
「そうなの?」
「沙耶さんと離れたくない」
「…」
「沙耶さんが好きなんだ」
「…」
「だからそばにいたい」
「…」
彼女は何も言わなくなってしまった。その沈黙に不安が増す。
「僕はここに残るよ」
「…」
「お母さんだけ行けばいい。だから」
「そんなこと無理よ」
「どうしてさ」
「いつか…」
「いつか?」
「いつか必ずお別れのときが来るの」
「いやだ」
「光輝くん」
「いやだよ」
「いつか…光輝くんはわたしを忘れる」
「そんなことない!」
だめと言われたのを忘れ、彼女の肩を抱きしめた。
「もっと大きくなったら、光輝くんにも彼女ができたらね。わたしなんか忘れてしまう」
なんでそんなことを言うんだ。悲しい声で、なんでそんなことを。
「絶対に忘れないよ。大きくなっても大人になっても、僕は沙耶さんを絶対に忘れない」
すると、彼女の口から、不思議な、歌のような詩のようなものが流れ出した。
「わすれじの、ゆくすえまでは…」
そのあとはよく聞き取れなかった。僕は彼女の肩を抱いて、絶対に忘れないからと、馬鹿みたいに繰り返していた。
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