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内田美奈子「ブラインド」によって想起した三つ子の魂百までの精神

SNSでタイトルを見たので懐かしくなって読む。

本はまだ持っているはずだけど、他の多くの本たちと一緒に収納の奥にいる。思えば本を全部並べられる家に住むのが子供の頃からの夢だったが、それは電子書籍で初めて叶うのかもしれない。

内田美奈子先生による短編集。今読んでも、どの話も良い。80年代中期の『プチフラワー』は最高というよりほかない。
改めて今読んで生々しく想起されたのは、私は本当にこの、「内田美奈子男子」とでも言おうか、内田作品に出てくる男子が好きであったということだ。
頭脳明晰で歯に衣着せぬ物言い、辛辣だし優しくないし性格悪そうだけど本当はそんなことはない。この作品集で言えば、「あなたたちの悩み」の深瀬くんとか、「追い求める季節」の拝島くんとか。“くん”までが重要。下の名前は不要。マジで好きでした、今も好きです。
大人になってから冷静に読むと、大変〈都合のよい〉男子たちである。主人公のことが一途に好きで、それなりにぐいぐいとくるが、きちんと距離は守ってくれる。主人公が悩んでいればアドバイスなども適宜してくれるが、乱暴に踏み込んではこない。押しは強いが押し付けがましくはなく、我慢強く待ってくれている。偉すぎる。
さすが『プチフラワー』といえど少女マンガ。「こんなにこんなだったかあ……」としみじみする。
たとえば今でいう「理解ある彼くん」的にわかりやすく善人に描かれているわけではないのがとても良い塩梅で、しかしこういうのも今だとわかりづらいと捉えられてしまうのだろうか。このちょっとした屈折感がたまらなくいいのに。最終的にはストレートにずばっと来てくれるとこもこう、ぐっと踏み込んでからのハイジャンプという感じでいいですよね〜って言ってる意味がわかりません。

とにかく、私はこういうキャラが昔から好きだし、なんなら今も求め続けている。こういうものの好みは変わらないものである。歳をとって許容範囲が広がり、さまざまに多様性に開かれたりしていっても、思春期の好みが今も芯を食っている。



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