
【こんな映画でした】88.[トンマッコルへようこそ]
2020年 4月21日 (火曜) [トンマッコルへようこそ](2005年 WELCOME TO DONGMAKGOL 韓国 132分)
『映画20世紀館』(橋本勝 花伝社 2008年)で紹介されていたもの。この本によると、村の名前「トンマッコル」とは「子供のように純粋な」という意味を持つとのこと。予想通りに良い映画であった。もちろん内容はハードで重いものなのだが。コメディタッチで処理してあるので、かなり見やすくなってはいる。しかし、暴力シーン・銃撃シーンは残酷だ。
あと救いになっている狂言回しでもあるキャラクター・聖少女ヨイルが出てくる。オープニングシーンでは、「何、この子」といった感じだが、見慣れてくるとずいぶん愛くるしく見えるものだ。俳優はカン・ヘジョンで撮影当時22歳くらい。幼く見える。
監督はパク・クァンヒョンで、もちろん初めて。主役の二人は、シン・ハギュン撮影当時30歳、チョン・ジェヨン撮影当時34歳。
ラストシーンも、こう言っては何だが、なかなか洒落ている。五人の兵士が一室で午睡しているところに、ヨイルが入ってきて、若い兵士に自分の髪飾りにしていた花を挿してやり、出ていく。まるで五人の兵士全員が亡くなったのは、夢であったのだと。
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この五人の兵士が村を爆撃されることから救うために命を懸けるところは、黒澤明の[七人の侍]が念頭にあったのかもしれない。そこでは二人が生き残るが、こちらでは全員死んでしまう。そのシーンはお互いにやりおおせたという満足感からくる笑顔をお互いに交わしながら。そして爆裂の炎。
何度か作中出てくる蝶は、どういう意味があるのだろうか。このトンマッコルという場所が、桃源郷であることを暗示するものかもしれない。ともかくこんな重いテーマを、重いだけではなく、ある意味軽く描くということで、監督の意図は成功しているというべきか。それにしても重く悲惨な歴史なので軽々に云々できるものではないが。