【こんな映画でした】753.[約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語]
2022年 2月26日 (土曜) [約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語](2009年 THE VINTNER'S LUCK フランス/ニュージーランド 126分)
ニキ・カーロ監督作品。四作目となる。ここにきて私にはちょっと分かりにくい映画とぶち当たった感じ。なんせ天使というか、本人は(?)堕天使と称しているそんな男性(?)が登場するのだ。それも重要な役で。
主人公ソブランをジェレミー・レニエ(撮影当時27歳、2010年のカトリーヌ・ドヌーヴの[しあわせの雨傘]に出ていたようだ)。男爵夫人オーロラをヴェラ・ファーミガ(撮影当時34歳、初めて)で、なかなか良い感じであった。
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舞台は19世紀初頭のブルゴーニュ。原題の「vintner」は「ブドウ酒醸造業者」とのこと。「運」という言葉を主人公が多用している。そういえばワインというのは、出来のいい年とそうでない年があるとか。それを「運」としているのかもしれない。確かに自然現象は人知を越えたところにあるものだから。
ただ、だからといって運任せでは仕事にならない。その点、この主人公はやや人間として弱いようだ。だから「天使」が出てくるのだろうか。最後にあのヴィム・ヴェンダースの[ベルリン・天使の詩]同様に、天使を辞めて(?)地上に降りてきて人間になってしまうのだ!
観ていて最初は、主人公の頭の中だけの妄想・幻想かなと思っていたが、最後の最後にその白い羽を切り取ってもらい、人間になってしまうのだから、これはもうどう考えればいいのか。まだ答えが出てこない。とりあえずはニキ・カーロ監督がこの「天使もの」を撮ってみたかったということか。
なおオープニングシーンとラストシーンは同じカットであった。もちろん何カットも撮影しているので、まったく同じものではなかったが。つまりオープニングシーンでは、誰がワインを注いでいるのか顔がはっきりしない。そして何より左手にボトルを持っている。
ところがラストシーンでは、ボトルを持っている男性の顔が映し出されるが、そのボトルは右手に持っているのだった。そしてそのグラスを受け取るのは、革手袋をはめた人の手だけが映し出されるのだ(そしてそれは男爵夫人だと分かる)。
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ということで、この映画で何を言いたかったのか。人生というのは、良い時もあれば悪い時もある。天国と地獄とがある。人生はその両者の中間にあって行ったり来たりしているものだ、といったところだろうか。
とまれ主人公は幸せな生涯を終えることになるようだ。その後の男爵夫人、あるいは堕天使の彼はどうなっていくのだろう。ちょっと気になるところだが、映画は主人公が天国に召されて終わる。もっとも堕天使は、天国のようなものはないのだと言っていたが。
なお天使役はギャスパー・ウリエル(撮影当時23歳)で、見たことがあると思ったら[ロング・エンゲージメント]に出ていたのだった。そして運命のいたずらというか、彼は先月19日にスキー事故で亡くなっている。
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あらためてこの「天使もの」を考えてみると、ニキ・カーロ監督はこの天使を先ほどの二作のような現代ものにせず、19世紀初頭に持ってきているということで、よりお伽話風に描きたかったのかもしれない。
あと主人公がナポレオン戦争に出陣していくシーンもあった。もちろん1812年にロシアに敗退して帰国してくるのだが、その悲惨な一面も描く。志願なので行かなくても良かったのに、なぜ応募したのかは分からなかった。若気の至りというには、もう奥さんと子どもがいたのだから。