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【こんな映画でした】855.[泥の河]


2023年 9月22日(金曜) [泥の河](1981年 105分)

 小栗康平監督作品。1980年の大阪での試写会以来、二度目。子役の映画だ。「きっちゃん」はすぐに思い出せた。それほど印象深いものであったということだ。のほほんとした「信雄」と、キリッとした「銀子」も思い出した。

 このDVDブックは、しばらく前に買ってあったが、観るには決断がいった。封入されている対談(2015年のもの)で、監督自身も35年ぶりにDVDで今作を観ることになったと言っていた。要するに私と同じで、私の場合は43年ぶりということになる。

 覚えていることの方が少ないので、ある意味、二回目というよりも新鮮に観ることができた。きっちゃんが「戦友」を歌うシーンがあったが、これはまったく記憶してなかった。昭和31年、1956年という戦後11年の夏の話である。まだまだ戦争の傷跡はここかしこに残っていた、人々の心にも。信雄の父が、この歌をほめて、その先も続けて歌ってくれと言う。彼は満州からの引揚者であったわけだ。舞鶴出身で。

 銀子がスカートを着せられて、あげるよと言われるも、脱いで返していくシーンも覚えていなかった。キッチリとしつけがされている、しっかりしたお姉さんである。11歳だと言っていた。なお信雄ときっちゃんは、ともに9歳。船で生活するきっちゃんは、もちろん学校には行っていない。信雄が授業を受けているとき、彼は誰もいない運動場でひとり遊びをして、信雄の帰りを待っている。このあたりは[砂の器]の少年が、少し離れたところから学校の様子をうかがうシーンを思い出させる。子どもたちにこのような思いをさせてはならないとつくづく思う。

 結局は、戦争なのである。根本的な原因は戦争。大人たちの一部は戦争によって大もうけするが、大半の人々、そして子どもたちは最大の被害者だ。この当時を生きていた人々は、いまだ戦争の傷をそれぞれの心に残していたのだ。

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