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【こんな映画でした】793.[マダム・フローレンス! 夢見るふたり]
2023年 1月13日 (金曜) [マダム・フローレンス! 夢見るふたり](2016年 FLORENCE FOSTER JENKINS イギリス 111分)
スティーヴン・フリアーズ監督作品。メリル・ストリープ主演、撮影当時66歳くらいか。役柄は原題の通り、1868年生まれのフローレンス・フォスター・ジェンキンスが1944年、御年76歳でカーネギーホールでコンサートを開催するというもの。実話である。
その夫シンクレア役をヒュー・グラント(撮影当時55歳くらいか)、彼は売れない舞台役者であったとのこと。今を去る25年前にフローレンスと知り合い、結婚。その1944年の死まで付き添うことに。彼自身は1967年に亡くなっている。
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良い映画であった。音楽を志すものは須く観るべし、といったところである。人間にとって音楽とは何か、と根源的に考えさせてくれる内容である。
にもかかわらずニューヨークポスト紙の評論家は、少し聴いただけで会場を飛びだし、翌日の新聞には「音楽の冒とくである」と酷評する。もしこの部分も事実だとしたら、この評論家こそ音楽を冒とくするものだと私は思う。
そもそもアマチュアである彼女の、コンサートである。音を外すのはあってはならないことかもしれないが、プロだってミスをするのだ。まして彼女が歌ったアリアは高音が難しい難曲である。
音楽は人を幸せにするものだ。その証拠に彼女のぶっ飛んだ(?!)演奏のレコードを聴いた視聴者(戦傷兵だったようだ)からラジオ局にリクエストがあったそうだ。つまりそこには技術・テクニックを超えた、人の心を打つ何かがあったということだ。
音楽も踊りも、原初から人間の生活と密接にかかわってきている。これこそが人間にとって、音楽や踊りが必須なものである証拠だ。だから上手下手ではないのだ。どれだけ心がこもっているか、が大事なわけだ。
それをテクニック中心にとやかく論評する現代という時代は、どこかおかしいのではないだろうか。
それにしてもメリル・ストリープの出ている映画に、外れはないようだ。やはり観る映画選択の基準の一つは、俳優だろう。