
【こんな映画でした】568.[コロラド]
2022年11月19日 (土曜) [コロラド](1948年 MAN FROM COLORADO アメリカ 98分)
ヘンリー・レヴィン監督作品。初めて。この映画をどうして知ったのか、その経緯は忘れた。買ってだいぶ時間が経つが、ようやく観ることができた。そしてこれは拾いものであった。西部劇の一種なので、期待してなかったが、中味は娯楽ものにして、かつシリアスであった。
時代は、1865年の南北戦争のまさに終わらんとするその日の出来事から始まる。場所は題名通りコロラド。原題は「コロラドから来た男」なのか、「コロラド出身の男」なのだろうか。
主演は大佐・判事役のグレン・フォード(撮影当時32歳)、[パリは燃えているか]・[スーパーマン](1978)で観ているようだ。大尉・保安官役のウィリアム・ホールデン(撮影当時30歳)。女優はエレン・ドリュー(撮影当時32歳)、他の作品は観ていない。
戦争というもの、あるいは軍隊というものが、如何にまともな人間性を失わしめるかということを描いている。この映画が製作されたのは第二次世界大戦直後。そんな時によくこのような映画が作れたものだ。いや、直後だからできたとも言えよう。
時代背景を一世紀前の南北戦争を描くことにしているが、暗にこの第二次世界大戦やいずれやって来るベトナム戦争を暗示するような内容である。慧眼というべきかもしれない。
もちろん体裁は、ありふれた西部劇のスタンスであり、勧善懲悪のハッピーエンドである。つまり誰もが好む「悪は滅び、善は栄える」というわけだ。しかしその背後には、戦争や軍隊というものが、どれほど人間性を喪失させるものかということを私たちに知らしめる。ここでの大佐は「殺人鬼」になってしまったとされている。
その彼の背景には触れられていない。しかし映画で描かれた彼の行動を見るだけで、彼の(いびつな)人間性が見てとれる。周囲の人々の援助や努力にもかかわらず、彼は更生できない。そこが戦争や軍隊の恐ろしさというものであろう。そこでは最も人間というものの命が軽視される場所であるからだ。
さらに悪いことには、そんな彼が絶大な権力を握っていることである。彼が望んだものではなかったという設定ではあるが、一旦、権力を握ると人は豹変するものであろう。そういったところも娯楽作品になぞらえて指摘・指弾しているとも言える。なかなか大した監督だと思う。