【こんな映画でした】1033.[その男ゾルバ]
2019年 8月 7日 (水曜) [その男ゾルバ](1964年 ZORBA THE GREEK ALEXIS ZORBAS 146分 アメリカ/イギリス/ギリシャ)
ミキス・テオドラキスの音楽だけが印象に残っていて、というか耳になじんでいたもの。ようやくその本体の映画を観ることができた。古い映画だ。全体的にモノクロ画面であることと、俳優のアップが印象的だ(そういうカットが多かったのかもしれない)。
主役のアンソニー・クインは野卑ともいえる野性的・男性的な魅力いっぱいに演じている。過去に何本も観ていることに気が付いた。何といっても[道](1954)が有名だろう。そして[炎の人ゴッホ] (1956)・[アラビアのロレンス ](1962)・[ザ・メッセージ] (1976)など。
映画としては、モノクロのせいではなく暗い色調と言える。それはギリシアでもクレタ島というおそらく超田舎がその舞台であるせいか。田舎がすべて暗いというわけではないが、明るい太陽が輝いているはずなのに、そこに住む人々には明るさが感じられない。
そんな舞台での主人公の作家は、もちろん異邦人である。そして彼に雇われることになったギリシア人アレクシス・ゾルバ(これが原題)もこの場所に馴染んでいるようで、しかし異和感がある。山師といった感がある。
黒装束のまだ若い未亡人が登場するところから、不穏な空気が醸成される。その予感の通りに不幸な出来事が起こされるのだが、私には釈然としないシーンだ。要するにその未亡人に対して、みんなで石を投げつけ、ついには殺そうとするのだから。衆人環視の中で。それが当然のこと、つまり「合法」であるかのように。
ここが田舎の恐ろしさだ。法律も何もあったものではない。何の罪もない未亡人が、みすみす喉を掻き切られて殺されるのだ。
やはり釈然としないのは、息子パヴロが未亡人を恋するあまり、最後に自殺して果てるのだが、その責任はひとえにその(誘惑した?)未亡人にあるとして、復讐として殺害してしまう。これはどうも解せない。
それを非難する声は、たった一人の男だけ。彼はみんなから馬鹿にされている存在だ。彼だけが「人殺し」と人々を糾弾する。本当に恐ろしいところだ。
にもかかわらずゾルバたちは工事を続ける。そして失敗し果てて、ラストはもうこんなことは止めて、自分の分に合ったこと(作家)をしよう、ゾルバと分かれていくところ。
最後にゾルバに踊りを教えてくれ、と。そして二人して砂浜で踊るシーンを、カメラがどんどん引いていってお終い。ということで一回目は、この映画は何なのだろう、といったところで分からないまま終わる。
監督のマイケル・カコヤニスは初めて。[エレクトラ](1961)・[魚が出てきた日](1967)は聞いたことがあるが、おそらく未見。