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【こんな映画でした】82.[白いカラス]

2021年 2月 5日 (金曜) [白いカラス](2003年 THE HUMAN STAIN アメリカ 108分)

 ロバート・ベントン監督作品。[ボニーとクライド/俺たちに明日はない](1967)では脚本を担当していたとのこと。監督するのは初めて、と。アンソニー・ホプキンス(コールマン役、撮影当時64歳)とニコール・キッドマン(フォーニア役、撮影当時35歳)の主演。おそらく二人とも原作のほぼ年齢どおりだろう。

 現実に「白いカラス」というのは存在していて、ユーチューブで見たことがある。要するに色素がなくて「白」。しかし寿命は短かそうだ。ハンディキャップが大きいのだろう。人の場合でも、黒人でありながら、白人のように色が白い人が、確率的に出てくるとのこと。そういった場合、アイデンティティはどうなるのだろう。

 ここでの主人公コールマンは、フィアンセ(白人)との結婚に破れて、「白人」として、ただしユダヤ人として生きていくことを決意することになったようだ。それからの人生の苦難は、母親や兄妹との訣別など、口では言い尽くせぬほど。そして、ついに人種問題で墓穴を掘ることに。何ともやり切れない悲惨な事件というか事故である。大学における「政治」に利用され、失脚させられたのかもしれない。

 一方、フォーニアという女性は34歳、二人の子どもを事故で失い、離婚し、ひっそりと暮らしている。失意のどん底にあった彼女とコールマンの二人は出会うべくして出会ったともいえる。だから彼らの関係は、男女のそれというよりは、いたわり合う人間どうしの関係と見るべきだろう。セクシャルなものではなく。心と心を合わせるように、お互いの体を合わせるということ。
 そういう意味で、美しい映画である。ただ元夫の悪意により、二人は亡きものとされてしまうのだが。

 この映画は黒人問題をメインに据えた、人間の愛情を描く映画ということになるか。差別の根は深く、それこそ未来永劫にわたり無くならない・消え去らない問題かと思わせられる。

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