【こんな映画でした】893.[ロスト・エモーション]
2021年 8月13日 (金曜) [ロスト・エモーション](2015年 EQUALS アメリカ 102分)
ドレイク・ドレマス監督作品。しかし惹句にはリドリー・スコットの名前が。製作者ではあるのだが。近未来の超管理社会を描く。とても見ていて息苦しくなる内容で、一度には見られなかった。
原題は「同等の人、対等の人、かなう人、匹敵する人、平等なもの、対等なもの」ということだが、これは支配者から見てのものということだろう。本来的には同等であり平等であることは良いことなのだが、ここではその真逆ということになる。つまり個性が認められてないのだ。
人を好きになり、愛するという感情を完全否定する社会をここでは描く。感情を持ってしまった(遺伝子的に失われた状態で生まれてくる?)人は異常者であり、ここでは「SOS」と名付けられた患者なのだ。軽症(?)のステージ1から4までだったか、最終的に「DEN」というところに送られて自殺させるか何かで結局殺されてしまうことになる。
異端者は抹殺する、それも合法的に。ただその患者とされるのは今のコロナ騒動同様、捏造されたデータで作り上げられるようだ。恐ろしさがひたひたと伝わってくる。
主役のニナにクリステン・スチュワート(撮影当時24歳)、サイラスにニコラス・ホルト(同)。いずれも初めて。なかなか良いキャスティングだ。
彼らはこの超管理社会から逃げだそうとする。一瞬、あの「ロミオとジュリエット」の結末のようになるのかと思わせられるシーンがある。
全体を通じて無機質な白一色の空間やコスチュームは、実に不気味である。白も黒も上手く使わないと恐怖を象徴する色となるようだ。
あと俳優で目立ったのはベス役のジャッキー・ウィーヴァー(撮影当時66歳)とジョナス役のガイ・ピアース(撮影当時46歳)。
最後はあの[小さな恋のメロディ]ではないが、二人で列車に乗って境界へ向かうところで終わる。その先がどうなるかの、具体的なヒントはない。佳作であるが、見ていて辛い。人間の自然の感情というものを封殺することの非人間性をよく表現している。