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【こんな映画でした】32.[ショート・ターム]
2022年 2月17日 (木曜) [ショート・ターム](2013年 SHORT TERM 12 アメリカ 97分)
デスティン・ダニエル・クレットン監督作品。ブリー・ラーソン主演、撮影当時23歳。既に観ていた[ルーム](2015)でも主演であった。
原題は「短期間」ということで、「第12青少年短期保護施設」といったところか。親からの虐待やネグレクト等の理由で入所してくるようだ。ここで働く職員の位置付けはよく分からないが、主人公のグレイス(supervisor)たちは、所長からは単なる専門性のないスタッフのような扱いを受けている。
様々な子どもたちがいるが、それぞれが愛情に飢えているというのは共通のようで、関心を持ってもらうために半裸で外へ飛び出したりするのもそうだろう。なおこの男の子のエピソードが、オープニングシーンとエンディングシーンで使われている。
そこに父親から虐待を受けているらしいが、それを言えずにいるジェイデンという女の子がやって来る。グレイスにも他の入所者にも馴染まない。彼女が徐々にみんなと打ち解けていく様が描かれるが、それは一筋縄ではいかない。その施設から「脱走」したり、と。
ある日グレイスに、このジェイデンが自分で作ったおとぎ話を聴かせる。それはサメとタコが友達になって、というもの。友達の欲しかったタコがサメと友達になる。するとサメは「お腹が減ったから君の足をくれないか、友達だろう」、と。以後、毎日のように同じセリフが繰り返され、そのつど足をくれてやり、とうとう残り一本にまでなる、というのだ。
彼女の気持ちを表す残酷な話だ。友達だからといって、何でもかんでもオーケーとすべきでないことは誰でも分かっている。しかし友達を失いたくないという弱みにつけこまれると、それはなかなか拒否しにくいのだろう。要求する方が悪いに決まってはいるのだが。
ジェイデンたちと忍耐強く付き合うグレイスは、実は自らが父親からの虐待(妊娠させられた)の被害者であった。そのため同僚のメイソンの子を妊娠してもその喜びよりも不安が先立ち、彼との結婚も拒否してしまうことに。そんな折、父親がまもなく刑務所から出て来るとの連絡が来て、彼女はさらに落ち込む。
このようにグレイス自身が父親とのことに悩みつつ、ジェイデンのことを何とかしようと行動していくこと。それが結局、情けは人のためならず、ということになり、彼女をも利することになる。100パーセント、ハッピーエンドというわけにはいかないが。
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アメリカの行政システムについては調べてないが、ともかく問題を持つとされる子どもたちを守る施策としてこのような施設があるということ。ただし年齢制限があり、18歳になると退所しなければならない。その後の彼らがどうなるかは分からないが、一つマーカスのことだけが明るい話題として紹介されている。元気で働いているとのこと。
このマーカスについてのエピソードがある。映画のオープニングシーンは、ネイトという若者(大学生なのだろう)が研修としてこの施設にやって来るところ。早速みんなの前で自己紹介するのだが、それが私からしてもとんでもない内容。もっとも一般人の感覚はそうなのかもしれない。つまり「恵まれない子どもたちの施設で働くために一年休学してきた」と発言したのであった。
この挨拶に反応、いや反発したのはマーカスだけで、あとの子どもたちはみんなシラッとしている。つまり、悲しいまでに彼らはもう社会における自分たちの状況を把握している。あるいはそういった社会的評価に対して諦めているのだ。だから無反応かそれを装っていたのだろう。