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【こんな映画でした】41.[木靴の樹]

2022年 3月 9日 (水曜) [木靴の樹](1978年 L' ALBERO DEGLI ZOCCOLI THE TREE OF WOODEN CLOGS イタリア 187分)

 エルマンノ・オルミ監督作品。1980年に映画館で観て以来二度目となる。その時は何とつまらない訳の分からない映画か、と思ったようだ。しかし今、いろいろとイタリア映画を観てきていて、そのネオレアリズモ(1940~50年代)の流れにある映画なのだとその意味合いを知ることとなった。

 これといって何かを描いているというわけではない。淡々と封建社会における地主と小作人の関係を示し、その中での農民たちの日常生活を描いている。もちろん貧しいことこの上ないのだが、彼らからしたら、それでも雇われて食っていけるだけで良しとすべきなのだろう。

 そんな社会の矛盾・問題性を何ら感じることなく・深く考えることなく、日々の生活に汲々とせざるを得ないのが庶民であろう。だからそれを描写する映画には事件らしい事件は起こらないわけだ。普通なら明るい話題である結婚式もあるのだが、いま一つだ。あまり喜びが感じられない。

 その後、題名になっている木靴が切っ掛けになり、この一家は住む家から追いだされるというのが一番の大事件。しかし彼らはそれを淡々と受け入れる。ある種の絶望感が基底にあるようだ。

 あと私など観ていて嫌でも耳に付くのが、常に「主に祈りを」とお祈りをしていることだ。子どもたちにも「しなさい」とうるさく言う。もっとも「神と子と精霊」とはいいながらも、実際はマリア信仰なのだろう。以前観たイタリア映画でもそうだった。良い悪いは別として、宗教というものは、このような社会の不公平・不平等・人々の苦しみなどを慰藉する機能がある。

 この映画は、声高に地主の非情なやり方を批判したりしない。もうあるがままの、その頃の有様を描写していくのみとも言える。デモ隊が出てくるが、具体的には何のことか分からないが、社会に変化の兆しが見られるということかもしれない。

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