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【こんな映画でした】230.[ミモザ館]

2020年 9月17日 (木曜) [ミモザ館](1934年 PENSION MIMOSAS フランス 105分)

 ジャック・フェデー監督作品。主役は[女だけの都]同様フランソワーズ・ロゼーで撮影当時43歳くらい。養母役(ルイーズ)をよく演じていると思う。実の息子のように面倒をみていたピエール役(大人の方)はポール・ベルナールで、撮影当時すでに35歳くらいで、22歳の役を演じている。10年後の[ブローニュの森の貴婦人たち](1944年)では主役を演じている。

 ネット上で見ると、養母の男の子の養子に対する異常な愛情、といった分析が見られた。通り一遍の解釈ではそういうことになるのだろう。でもそれでは、この監督をある意味貶めるものではないか。そんな単純な解釈で作っているだろうか。

 そしてフランソワーズ・ロゼーの演技である。あの演技をちゃんと観ていれば、もっと複雑な人間の感情と愛情を描いているものと感得できるものだと私は思う。

 終わり方のしんどさからの解放のためか、ラストには戯画的なシーンが入れられている。一つはピエールがあけた穴埋めのために、お金を獲得しようと行ったこともない賭博場へ。そしてルーレットで30万フラン稼ぐのだ。まさにビギナーズラックを地で行くようなシーンだ。

 そしてラストシーンは、まず残酷な仕打ち(?)をルイーズに与える。いまわの際のピエールの言葉は、養母ルイーズのことではなく、愛する「ネリーか?」、と。そしてルイーズがウソをついてそうだと言うと、「キスして」。そして軽くキスをしてやると、次の瞬間、ピエールは息絶える。

 ピエールの遺体の上にうつぶして嘆くルイーズ。そこで強い風で窓が開き、風が吹き込んでくる。部屋に入った時、手にしていた札束はベッドの足元に置かれたままであった。風に煽られて、その30万フランが部屋の中を舞う。

 このシーンも実際には、そう上手くいくはずはない。部屋の中をくるくる札が回っているのだ。不自然さを意識させることなく、その状景をルイーズやピエールのことを思いながら観ることとなる。映画のウソではあるが、象徴的な上手いエンディングだろう。

 ネリー役のLise Delamare (リーズ・ドラマール 1913–2006)も見事な演技と言えるだろう。撮影当時21歳。ちゃんと見たらしっかりした良い顔をしている。後に[ラ・マルセイエーズ](1938)でマリー・アントワネットを演じている。

 そんな役者が自堕落で、男をダメにしてしまう娼婦を演じている。愛よりも金、という人生観の持主を。だから最初からピエールは利用されただけで、愛されてはいなかったことが分かる。もっともピエール自身は気がつかないのだが。

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