【こんな映画でした】223.[エル]
2020年10月27日 (火曜) [エル](1952年 EL メキシコ 92分)
ルイス・ブニュエル監督作品。これで6作目となる。原題の「EL」(エル)は「彼」の意。映画を観る前はそれを知らずにいたが、見終わってなるほど、と。「彼」という主人公はフランシスコで40歳くらい。俳優はアルトゥーロ・デ・コルドヴァ、撮影当時43歳くらい、メキシコ人。上手い。
妻となるグロリア役は、デリア・ゲルセス、撮影当時22歳、アルゼンチン人。なかなか魅力的だ。いずれにせよメキシコにおける上流階級、つまりお金持ちであることは間違いない。
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オープニングシーンからして、いきなりこの監督特有の「足」が出てくる。まずはキリスト教会での儀式のよう。そこからパンしてグロリアの足へ。その視線はフランシスコのもの。それで一目惚れ。以後、ある種のストーカーに。
フランシスコは、画策してついにラウルと婚約していたグロリアにそれをやめさせ、結婚する。しかし結婚当日の夜には、彼は豹変する。嫉妬深い小心な精神不安定の一個の情けない男と化す。
グロリアは一瞬不安を覚えるが、そのまま3週間の新婚旅行を終え、新婚生活へ。しかしその中で、徐々に「彼」の問題点が浮き上がってくる。周りの人たちからは、一点の非の打ち所がない人間としての評価を得ているのだが。
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と、続いていく。世の中にはこのような男性というか、人間はいるものだ。厄介なことだが、それを見抜くのは難しい。結婚して初めて分かるというのは辛いものだ。もちろん本人も苦しんではいるのだろうが。
(フランシスコがグロリアに)
利己主義は高貴な魂の本質なんだ。私は人間を軽蔑している。私が神なら人間を許さない。
(グロリアとラウルのやりとり)
別れようとしても何かに引き留められる。何か分からないけど。/結局、彼は完全に狂ってる。/なのに、とても正気だし