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【こんな映画でした】879.[救命士]

2021年11月26日 (金曜) [救命士](1999年 BRINGING OUT THE DEAD アメリカ 121分)

 マーチン・スコセッシ監督作品。最近の映画からすると、この二時間という尺は長すぎる。しかも内容が内容だけに観ていて疲れる。ニコラス・ケイジという俳優をきちんと見るのは初めてだろう。

 その彼に言わせている。「俺の仕事は命を救うことではなく、見届けてやることだ。現場に駆けつけて悲しみを拭き取る雑巾」だと。

 この救命士(emergency medical technician 略してEMT)になるためには5カ月間の養成学校を出る必要があるとのこと。それで救急車に乗り、現場で救命作業に掛かるのだから凄いと言わざるをえない。日本では医療行為は医師の特権にされてしまっているので、見ていてとても新鮮だ。

 そして救急医療というものが、医師でなくてもある程度の教育訓練を受けていれば可能だということにも気付かされる。

 舞台は1990年代初頭のニューヨークとのこと。そのほぼ事実であろう実態に基づくものとのこと。監督はこの有様を描きたかったとのこと。基本的に悲惨である。しかしそれから目を逸らすわけにはいかないのだ。同じ社会に生きる人間として。

 これを観て私たちも、いかなる理由でそのような状況が生じるのか。そこに目をやり、考えていくべきなのだ。命に軽重はないと言いつつも、実態としては明らかに違いがある。貧しい人たちの命は軽い。簡単に死んでいく。もちろん本人の自己責任の面もないわけではないにせよ、社会のセーフティーネットが必要だ。

 あとここで主人公のトラウマとして、救えなかった人たちのことを何度も何度も思い返しているシーンが描かれている。真摯に対応すれば、そのような気持ちになるのも無理はないだろう。逆に救えた時には自分が神になったような気持ちにもなる、と。いずれにせよ辛く、酷な仕事である。

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