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【こんな映画でした】156.[泳ぐひと]
2021年 9月10日 (金曜) [泳ぐひと](1968年 THE SWIMMER アメリカ 94分)
フランク・ペリー監督作品。初めて。シドニー・ポラックも関係しているらしい。バート・ランカスター(撮影当時54歳)主演。その年でよくやると思う。ずっと裸足、水着一つで。落魄した男性を描いていることが、最後に分かる。
女優陣は特段に言うことはないが、若い女性(ジャネット・ランドガード、撮影当時は役柄と同じ20歳、もっともその後の出演はあまりないようだ)と元愛人(ジャニス・ルール、撮影当時36歳)。
何ともシリアスな映画。アメリカ映画なのにハッピーエンドではない。最後まで見終わってから、もう一度見直すと彼らの会話の意味合いが違って聞こえてくる気がする。
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彼がいきなり水着姿というか水泳パンツ一つで、あとは何も持たず現れるオープニングシーンからして異様であった。どこから来たのかも分からない。もしかしたら収容されていた病院から逃げだしたのかと私は推測した。
正気と幻想が入り混じってしまっており、いわゆる正常な状態ではないということが、その後のエピソードによって分かるようになっている。たとえば若い女性ジュリーとのことも。もっとも友人の名前などはきちんと覚えてはいるのだ。
ラストシーンは無残だ。公営プールの先の丘を越えれば、自分の家だと言っていたが、なるほど確かに家はあったが、その前のショットでまず荒れ果てたテニスコートが映し出される。そして折しもこれまでの青空に替わって、雷雨となる。
その中を家にたどり着くのだが、そのドアは厳しく閉まったままである。何度も何度も叩き、ドアをひねるが開くわけはない。カメラはその彼から左へパンして窓ガラス、それも割られたそれを映し出す。スッと近寄っていって割れた部分から中を覗く。がらんとした室内。ただその真ん中に、テニスのラケットなどいくつかのものが打ち捨てられている。
ソッとカメラは引き、右へパンして彼をとらえる。絶望した彼はドアの前で崩れ落ちる。カメラは再び引いて、エンドロールに。