【こんな映画でした】459.[暗殺のオペラ]
2022年10月24日 (月曜) [暗殺のオペラ](1970年 STRATEGIA DEL RAGNO THE SPIDER'S STRATAGEM イタリア 99分)
ベルナルド・ベルトルッチ監督作品。主人公アトス・マニャーニをジュリオ・ブロージ(撮影当時39歳)、ここでは父親と息子の二役だが、ザッと観ているかぎり別人のようであった。調べて分かったがこの俳優はつい最近観たばかりの[シテール島への船出](1983年)の主役でもあった。
アリダ・ヴァリ(撮影当時49歳)がその父アトスの愛人だったという設定。彼女の依頼で息子のアトスが父を暗殺した犯人を捜し出すというのがメインストーリー。ところが、その犯人とは? ということになる。
原題の「STRATAGEM」(英語)・「STRATEGIA」(イタリア語)は、「計略・戦略・策略」の意。つまり原題は「蜘蛛の策略」ということになるか。原作はホルヘ・ルイス・ボルヘスの小説「裏切り者と英雄のテーマ」(『伝奇集』所収)とのこと。こちらの舞台は1824年のアイルランドで、その英雄はキルパトリック。これをイタリアに翻案したもの。
邦題の付け方もなかなか考えてはいるが、やはり原題ほどのインパクトがない。「暗殺のオペラ」というのが何を言うのか、いま一つピンとこないのだ。なるほど映画を観れば、それヴヴェルディの歌劇「リゴレット」であった。それでもそれを「暗殺のオペラ」と称するのはいささか無理があるだろう。
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主題は、人間の生きる社会には往々にしてあることとして、これに限らずいつの時代でも、いずれの場所にあっても起こり得る・起こってきた事象なのである。人間というのは悲しいものである。歴史と自分のまわりを取りまく人たちによって翻弄されていくのだ。
このタラという田舎町でのファシストと反ファシストとの争いは、おそらくこの町を二分する争いであったろう。そんな中にあって最終的に町の人たちにとって最も重要なことは、何(戦争)があろうと彼らの生活は続けられねばならないということだ。そのためには何でもする。隠蔽も捏造も。そして場合によっては殺人も。そんなことをみんな知っていても暗黙の了解で押し黙っているのだ。それが彼らにとっての平和であり、いちばん大事なことなのだから。
そこにその秘密を暴こうとする異端者が出現したら、たちまち彼を排除しようという動きが出てきても不思議ではない。さすがに威嚇だけで、殺人には至らないわけだが。
それはともかく映画の映像美には見るべきものがあった。美しいと思う。映画の中味とは裏腹に。