【こんな映画でした】355.[帰郷]
2021年 4月26日 (月曜) [帰郷](1978年 COMING HOME アメリカ 128分)
ハル・アシュビー監督作品。初めて。ベトナム戦争をあつかった映画であった。反戦映画と言えるだろう。主演はジェーン・フォンダ(撮影当時40歳)とジョン・ヴォイト(撮影当時39歳)。
どうもセクシャルなシーンのことがとやかく言われて(書かれてあって)買ってからもなかなか手が出なかった。ようやく観たら、何のことはない、ごく普通のラブシーンであった。これくらいなら騒ぐことはない。
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1968年当時のこととか。ラストシーンでボブがどうなるのかと思わせられた。私としては生きててほしいと願うあまり、映画の文法を逸脱してそのように解釈したのだが。残念ながら解説には、はっきりと入水自殺と書いているのもあった。たしかに全裸になり、結婚指輪も外して置いていったのだから、それは自殺すると解釈すべきだったのだが、私はしたくなかった。
あまりに無惨な結末である。それはベトナム戦争というもの、国家悪のなせる悪業であり、冷徹にそこに目を向けるためにもこのような結末が必要だったのかもしれない。
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愛国心や、なぜ戦争に行くのかといった議論が作中されているが、それはフィクションでありながらそれ以上のものを観客に訴えてくる。メイキングにあったが、単なる戦争もの・反戦ものにせずに、恋愛劇というか人と人との愛しあうということをメインにしているのがこの映画の成功のポイントだろう。
それにしてもアメリカ人の男性(主として白人男性になるか)は、どうしてかくも「英雄」を好むのだろう。もちろん自分が、その英雄になりたいと思っているわけであり、そしてその絶好の機会が、戦場だというわけだ。
いずれにせよ国家は、愛国心に訴えて彼らを戦場に送る。その真の目的も知らず、国のため家族のために敵を殺しに行く。その陰で一体誰がほくそ笑んでいるのだろう。無惨である。国家は、あるいは覇権国は冷酷である。
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2021年 5月 6日 (木曜) [帰郷](1978年 COMING HOME アメリカ 128分)音声解説版
何回かに分けて音声解説版を観る。ジョン・ヴォイトとブルース・ダーン、そして撮影のハスケル・ウェクスラー(何本か観ている)。役者の心理とか準備。撮影時の照明とかフレーミング、ロングと引き等々、専門に勉強しようという人にはずいぶん参考になるのではないか。
ラストシーンでのルークの、学生をまえにしたスピーチをメモしてみた。結構、長いものだ。時間でいうと120分からラストまで、他のショットとのカットバックをしながらで。
「君たちは愛国心に駆られて、祖国のためにひと働きしたいと思う。だが目で見る現地は、その期待を覆す。君たちは、たちまち年を取る。あまりにも多くの死を見るからだ。諸君は映画で見た軍服にあこがれ、過去の戦争の栄光を頭に描く。何となく勇ましい気分になって、敵と戦おうと思う。現実は、映画とは大違いだ。誰も教えてくれなかった。俺は君たちの頃、奴らのウソをうのみにした。当時はこんな体ではなかった。"英雄になろう"、"祖国のために殺そう"。そう思って、俺は祖国のために人を殺した。ところがどうだ。殺した理由が見つからない。腕の中で人が死に、戦友が目の前で吹っ飛ぶ。この目で見たんだ。最低だ。無益もいいとこだ。俺はひどいことを。......一生、頭から離れない。君たちにそんな悔いを背負わせたくない。俺はこうなったが、おかげで利口になった。俺は君らに言いたい。選択は君らの手にある」
【見事な反戦のメッセージである。しかしそれでも最後に「選択は君らの手にある」、と。その通りだろう。誰も強制はできない。であるから自分の頭で考えて行動したいものだ。それが非常に難しい、特に若い頃は。】
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