【こんな映画でした】820.[アメリカの影]
2023年 2月 6日 (月曜) [アメリカの影](1959年 SHADOWS アメリカ 78分)
ジョン・カサヴェテス監督作品。アメリカ社会の一断面を「影」として描くものだろう。即興的な演出で撮影しているとのこと。だから露出不足・光量不足のシーンもある。
トニーとレリア(レリア・ゴルドーニ、撮影当時20歳)の恋に関しては、人種差別的な問題があると兄のヒューが言っている。長兄のヒューはまったく黒人そのものだが、次兄のベニー(ベン・カルーザス、撮影当時21歳、1967年の[特攻大作戦]で観ているようだ)はハーフっぽい。さらにレリアにいたっては白人と変わらないくらいである。つまり彼らの両親は白人と黒人のカップルであったということだろう。
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場所はマンハッタンとのこと。最初は何が何やら、何が始まり、どのようになっていくのか見当がつかない。荒々しいタッチの映像が続いていく。照明を使用しないので、ひどく見にくくなるシーンも少なくない。それだけ臨場感があるということ。
トータルとしてみたら、主たる人物としてまずベニーがあり、そしてその妹レリアがいる。解説にあったが、この二人が何度も発する言葉は共通していて「Don't touch me.」なのである。「私に触れないで」・「俺に触るな」というわけである。二人とも自分を確立して生きていくために苦労している感がある。
ベニーの場合、何が問題なのかは明らかにはならないが、ともかく日々を浪費している。最後に「女あさり」のようなことをせずに、と友人に言って別れていく。それがラストシーンである。つまり彼はようやく自分らしい生き方へと歩み出すことができるというところで映画は終わる。
一方、レリアは男友達の威圧的な女性差別に抗して、私は私だと主張して生きていこうとする。いきおい抵抗を受けることになる。白人・黒人にかかわらず、男というものは女性を支配下に置きたがるものであり、レリアはそれを拒否するのだった。
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トニーは果たして人種の壁を乗り越えて、レリアと結ばれるのかどうか。それには触れずに映画は終わっている。なお長兄のヒューは、プロの歌手ではあるが、なかなかに苦労をしている。そのマネージャーとのやりとりが何度か出てくる。しかし私など、ついレリアの方に目が行ってしまうのだった。
青春時代をどのように生きていくか。若者の悩み・生態を描く映画と言えるか。