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【こんな映画でした】106.[テルマ&ルイーズ]

2020年 5月 9日 (土曜) [テルマ&ルイーズ](1991年 THELMA & LOUISE 130分 アメリカ)

 これがあの有名な映画であったか、と。ようやく観ることができた。前半は観ていて辛く、何度か止めようかと思った。見終わって、これは良い映画だと気づかされた。なかなか厳しいものがあるが、時代を画する映画の一つだろう。言い方によったら、単に男性から女性に主人公を替えただけのありふれた映画ということになるのかもしれないが(サランドンがメイキングで言っていた)。

 女性二人が主人公の、いわば相棒ものというのは意外にこれまでなかったようだ。そういう意味でも画期的だとのこと。あるいは時代性から考えて、少なからぬ女性に希望を与えることになったのだろう。

 監督のリドリー・スコットは「コメディ」だと言っていた。この脚本ではもっとシリアスに撮ることもできたが、そうはしなかった。なぜならコメディなら何度でも観てもらえるから、とやはりメイキングで言っていた。

 シリアスな内容のものほどコメディタッチで、というのは正解だろう。そして問題のラストシーン。ストップモーションの絶大な効果を示す典型的な一例だ。リアリズムで最後まで映しきるよりも、あとは私たちに想像させる。あるいはその余韻に浸らせる。これが、いい。

 二人の主人公は、ルイーズ役のスーザン・サランドンは撮影当時44歳くらい([ラブリーボーン]2009を観ている)。テルマ役のジーナ・デイヴィスは撮影当時34歳くらい。この二人が適役だ。特にジーナ・デイヴィスは、男好きで無知な女性のイメージを上手く表現している。また、まだ無名の頃のブラッド・ピット(JD役)も出ている。刑事役のハーヴェイ・カイテルも渋い良い味を出している。

 ジャンルとしては、ロードムービーとも言える。ほとんどがサンダーバードを駆使しての太陽の下、走ってるシーンの感あり。サランドンが日焼けが大変だったと言っていた。

 本編を観た時にすぐにおかしいと思ったことは、あのモーテルでジミーからお金を受け取ったルイーズが、テルマに預けるところ。頼りない子だと思ってるテルマに預ける必然性はない。むしろ不自然で見た瞬間にすぐにおかしいと思った。案の定、JDに盗まれるわけだが。敢えて一つだけこの映画に瑕疵があるとすれば、ここだろう。特典映像の「未公開シーン」を観て、その前後が分かったが、やはり私を納得させるものではなかった。

 あと未公開シーンについて言えば、惜しいと思われるものがいくつもあった。あるいはそのシーンがカットされたことにより、次へのつながりが分かりにくくなっているところもあった。本編を観ていて、どうしてだろうと思ったところだ。

 一方カットされて良かったシーンもある。ルイーズとジミーのモーテルの部屋でのシーンだ。長すぎるのもあるし、やや人生論っぽいところもあり、映画が重くなる。そういう背景があることは、本編だけで大体理解できる。

 あと特典映像を観ていて気が付いたことは、運転の仕方。サンダーバードはオートマチック車だとおもうが、足元のアップが何回か映されており、何と左足ブレーキを使っているのだ。さらにブレーキを踏むシーンでは、両足で踏んでいる。そして発進する時、右足をアクセルの方に持っていくのだが、左足はブレーキに乗せたままだった。またブレーキの形状は横に長い長方形であった。

 平凡なごく普通の人たちが、何らかのちょっとした切っ掛けで、人生の大きな転機を迎えてしまう。それが転落の軌跡をたどることにも。その誰にでも起こり得る恐怖を描いていると言えよう。同様のものにはダスティン・ホフマンとジョン・トラボルタの映画[マッド・シティ](1997年 監督コスタ=ガヴラス)があるな、と思いだした。トラヴォルタ扮するガードマンが、ほんの些細なことからテレビ中継され、事件の当事者になってしまうのだ。そのように仕向けたのがTVの報道記者ダスティン・ホフマンというものだった。

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