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【こんな映画でした】1052.[ミセス・ダウト]

2019年12月24日 (火曜) [ミセス・ダウト](1993年 MRS. DOUBTFIRE アメリカ 125分)

 クリス・コロンバス監督作品。食わず嫌いで観てはいなかった映画。もちろん知ってはいた。ロビン・ウィリアムズの女装がややなじまなかった。今回初めてきちんと観ても、やはり最初はやや違和感があった。観ているうちに慣れたわけだが。

 これまた上手く作られた映画だと思う。家族というものに第一義的に重きを置くのは、いずれの地域でも同じなのかもしれないが。ただその中でも父親の存在をクローズアップするところは、アメリカ的なのかもしれない。家族を守る責任は、男にある、といったような。

 基本はコメディであり、シリアスなものほどこの形式でなければ描けないとも言えるだろう。母親も父親もそれぞれに子どもたちを愛してはいるが、だからといって夫婦間の愛情が不変・不滅であるわけはない。いつ何時齟齬が生じても、それは致し方ないことだ。

 しかしその責任は、子どもたちにはないわけで、そこをよりベターなやり方でクリアしていかねばならない。その選択肢の中には、当然、離婚ということもある。昔ケストナーの本で、離婚しないことにより、苦しむことになる子どものことが書かれていた。進むのも引くのも難しい。

 そんな難しい問題だから、様々なアプローチがなされ、映画や小説が作られるのだろう。私にも他人事ではなかったので。アメリカの場合、もっとその蓋然性が高いのだろう。

 淀川長治によると(『おしゃべりな映画館3』(P.398))、映画の中で口ずさまれているのは[屋根の上のヴァイオリン弾き]であったり[ファニー・ガール]とかだそうだ。そのあたりはよほど映画を知っていないと分からないところ。あとこうも言っている。「この映画はロビン・ウィリアムズのショー映画。この人の芸を見るだけで楽しめる」と。


 あと言うまでもないが、子役たちが良い。そして妻役のサリー・フィールドも。撮影当時48歳くらいだが、明るい顔の時は若く、苦しんでいる時は年相応に見えた。メーキャップのせいだろうが。

 メーキャップといえば、ロビン・ウィリアムズのそれはなかなかのもの。顔を作るところは丁寧にいろんなやり方を見せてくれる。レストランでの早変わりはさすがにやや無理で、まさにコメディタッチ。

 ラストもいわゆるハッピーエンドというわけにはいかない。それがいくらアメリカ映画でも、現実というものだろう。

 あと面白いシーンというか、映画館なら笑いが聞こえたであろうと思われるのは、家庭訪問に来る女性にいっぱい声優として物真似をするが、まったく笑わないところ。それとその女性がクリームがお肌にいいので、と言われたあとちょっと頬に付けてみるところ。クスッとした笑いがあったことだろう。

 辻邦生は『美しい人生の階段 映画ノート'88~'92』の中でロビン・ウィリアムズの映画[いまを生きる]での演技について、次のように言う。「これだけ内面性を要求される役を誰が演じられるだろうか、と考えると、ウィリアムズの演技が並々でないのがよく分る。」(P.156)

 未公開シーンを観ると、隣家の女性との園芸に関してのやりとりが結構あったが、ほぼ全面的にカットされていた。ちょっと品がなさ過ぎたから、そしてしつこかったから。すでに125分にもなるので当然のようにカットされたのだろう。

 残しておくべきだったのは、「スペリングコンテスト」の6分。スペルを発表する大会のその後のリディアとの会話。そこのセリフは良かった。それと父親の性格的な弱点も出ていたので。次のようなやりとり。

「ごめん、自制できなくて」「フリをして、ダウトファイアさんや鳥になれるでしょう。ママと幸せなフリをして」「できるけど」「家族よね」「そうだがニセモノの家族だ。本物じゃない。だろ? 演技だから永遠には演じられない。パパはドジだからね」「父親も仕事よ」「違うよ、父親でいることは喜びだ。演じる必要なんてない。愚かでもお前の父親なんだ。雨の日も晴れの日も、素晴らしいことだよ(in my life)。ごめんよ(...forgive me?)」「オーケー」。

 なおこのシーンがカットされたのは、この前半のコンテスト中に座席のことで妻ミランダとやり合ってしまうのだが、これが今一つ流れが悪いというか不自然なのだ。その辺の理由かもしれない。

 ラストでテレビ番組を通してのダニエルのメッセージが印象に残る。次のよう。
 And you'll have a family in your heart for ever.

 007シリーズのピアース・ブロスナンがここでは敵役。ダニエルがしつこく意地悪をするが、やや(カットの時間的にも)やり過ぎの感。それは子どもたちと家に居た時、プールへ行った時、そしてレストランで。

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