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【こんな映画でした】588.[パラダイス・ナウ]
2020年 4月19日 (日曜) [パラダイス・ナウ](2005年 PARADISE NOW フランス/ドイツ/オランダ/パレスチナ 91分)
ハニ・アブ・アサド監督作品。何でこの映画のことを知ったのかは忘れた。しかし少なくともその内容についてネットで見て、これは観たいと思っていた作品。折しもアマゾンプライムに入っていたので。あと最近読み終えた『映画20世紀館』(橋本勝 花伝社 2008年)にも掲載されている。
それにしてもしんどい中味である。パレスチナとイスラエルの問題は、あのイギリスの置き土産で、いまだにイギリスの思惑通りに紛糾したままだ。最近アメリカ大統領トランプが、かなり手を入れようとしていたが、結局のところまだまだである。
ラストシーンは、サイードのバスの中でのクローズアップであった。身体に爆弾を巻き付けたまま。果たしてそれを爆発させたのかどうかは分からない。私は、残念ながら爆発させたと思う。
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正義も自由も奪われたとき、人は戦うしかない。弱肉強食の掟に従うなら、我々は動物と同じだ。耐えられん。不名誉より死を。自由のために戦うものは、そのために殉教もできる。お前が世界を変える。(ジャマール、教師か。25分~)
【これはアジテーションだろう。命あっての物種だ。こういう人物を、教師として認めていいのだろうか。疑問に思う。】
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自爆テロに選ばれた二人、幼馴染みでもあるのだろうハーレドとサイード。ジャマールから選ばれた旨を伝えられると、それは神の指示だとして従容と受け入れる。その二人が決行を前にメッセージをビデオ撮影するシーンがある。これは後にニュース映像でも見たことがあるので、こんなものかと。さてメモを見ながらカメラの前で彼らは訴える。
「不正と占領とその犯罪に対し、さらなる抵抗のために私は殉教を決意した。戦う手段はほかにない。パレスチナを承認することは、ユダヤ国家の自殺だとイスラエルは考えている。"2つの国家"という彼らに有利な妥協案すら受け入れない。彼らの望みは永遠の占領か、我々の消滅だ。占領を終結するために我々は、あらゆる可能性を模索した。だがイスラエルは入植を続け、エルサレムをユダヤ化し、民族浄化を行う。軍事力と政治力と経済力を駆使して、解決案の受け入れを迫る。すなわち被抑圧民族となるか、殺されるか。私は死を恐れない。殉教によって脅威に打ち勝ち、敵に勝利する。我に殉教者としての死を。......母さん、父さん、こんな別れ方を許して下さい。でもすぐに天国で会えるでしょう。お別れを言います。神は絶対なり。ムハンマドはその預言者なり。神の言葉は真実なり」。
【驚いたことにこの録画されたビデオテープは、レンタルあるいは販売されているということが、後のシーンで判明する。観る人・買う人がいるということだ。しかも「密告者」のそれは高値である、と。これも後で分かるが、サイードの父親はその密告者であり、処刑されている。彼が10歳の時だという。】
*
決行の途中、時間待ちをしている時に、この二人が話す。
「ハーレド」
「何だ」
「正しいことなのか?」
「何だと?」
「1時間後には俺たちは英雄だ。神と共に天国にいる」
「俺たちに選択肢はないとお前は言った。占領は死と同じだと」
「そうさ」
「ほかに方法はないか?」
「怖いか」
「そうじゃない」
「分からん」
「もうすぐ分かるさ、決行した瞬間に」
「死ぬ直前に過去が早送りで見えるって、本当かな?」
*
「英雄の娘」とされるスーハとハーレドの二人が、車(メルセデス)でサイードを探すシーンがある。その車中での会話。深刻である。結果として、ハーレドはスーハの言葉に心を動かされたようだ。それはこの後の行動に出てくる。先に言ってしまうと、このハーレドのサイードに対する説得は無に終わるのだ。
スーハ「なぜこんなことを!」
ハーレド「平等に生きられなくても、平等に死ぬことはできる」
「平等のために死ぬのなら、平等に生きる道を探すべきよ」.....「イスラエル側に殺す理由を与えないの」
「無邪気だな、自由は戦って手に入れる。不正がある限り、殉教は続く」
「殉教じゃない。復讐よ! 人殺しに犠牲者も占領者も違いはないわ」
「奴らは空爆する。俺たちは自爆しかない。まったく違う」
「何をしてもイスラエル軍のほうが常に強いのよ」
「死は平等だ。俺たちは天国に行ける」
「天国は頭の中にしかないわ」
「バチ当たりめ! 神のお許しを。英雄の娘でなきゃ......。地獄で生きるより、頭の中の天国のほうがマシだ。占領下は死んだも同然、それなら別の苦しみを選ぶ」
「残された者はどうなるの? こんな作戦で勝利すると思う? あなたの行動が私たちを破壊するのよ。そしてイスラエルに殺す理由を与えるの」
「理由がなくなれば?」
「殺さない。モラルの戦いをするのよ」
「イスラエルにモラルがなければ?」