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【こんな映画でした】603.[危機]

2021年 7月 1日 (木曜) [危機](1946年 KRIS スウェーデン 89分)

 昨日に続き二回目。イングマール・ベルイマン監督で観ることのできる最初の作品。英語字幕版なので、どうしても見落としや英単語の意味不明のところをスルーしている。微妙なところの理解ができてない可能性が否定できないが、とりあえずは観ることができて良かったとすべきか。

 モノクロでクッキリとフィルムに焼き付けられている点が、まず最初に気付かされる。解説によるとそのために相当の光量を俳優に当てているとか。画質が良いのは、クライテリオン社の技術力によるものなのかもしれない。

 題にこだわるなら、何が「危機」なのかということになる。それぞれ登場人物ごとに人生の危機の到来とも言えるか。オープニングシーンでこれは喜劇だとナレーションで紹介しているが、たしかにシェイクスピアではないが、人生は喜劇である。表面的には悲劇に見えても。

 順に見ていくと、まずネリーの養母。ピアノを教えながらこの18年間ネリーを育ててきた。そして今、不治の病に取りつかれている。さらにそこに降って湧いたように実母の登場。ネリーの動揺、と。

 ネリーにとっては大事な養母ではあるが、田舎暮らしに何とも言えない不満と都会への憧れを持っている。そして彼女は中年男性(ウルフ)から求婚されている。「オールドマン」(英語字幕)と言っているので、友人としては認めていても結婚の対象とはならないようである。

 実母は何があったのか18年振りに娘に会いに来る。それまでは妥協して「おばさん」としてであったようだ。今回は実母であることを主張して。策が成功してストックホルムに連れ帰ることができ、一緒に暮らすようになる。

 そこに介在するのがジャックという男で、実母の異母兄弟の息子ということらしい。何で暮らしているのか本当のところは不明で、いかにも遊び人・女たらしの風体。ネリーに近付いていく。

 舞踏会に現れたジャックがネリーを誘惑し、それをウルフが目撃する。ネリーはそれを機に実母とストックホルムへ。ウルフも失意の内に養母の下宿を出ていく。その後、実母も体調を崩すことに。

 それを切っ掛けにネリーをストックホルムに訪なうことに。実母の経営する店へ行き、ネリーと話す。しかし田舎に戻らないとの意志を読み取り、すごすごと戻ることになる。その時ジャックが現れて、彼女を駅まで送っていく。

 その際にジャックは、問わず語りに自分のことをいろいろと話すのだった。ここでの描き方を観ていると、彼をひたすら悪人として描くのではなく、何らかの事情のもと苦しんで生きていることが推察されるようにしている。人を愛せない、自分しか愛せない、と言ったことも。発車間際には未来を予測したようなことを言葉の端に出している。

 そのあとジャックは実母の店に戻り、ネリーと話す。あとで分かるのだが、いつもの作り話をしてネリーの歓心を買うのであった。そしてネリーの唇を奪い、事が終わった頃、実母が店に。そこでこの二人の修羅場の会話。

 ネリーも真相を知り、愕然とする。ただもしかしたら、ジャックはネリーのことは愛し、愛されたいとも思っていたのかもしれない。実母にいつもの作り話をバラされ、おそらく絶望して店を出て行く。と、まもなく銃声。ジャックは自死する。その直後、ネリーが彷徨して川べり、列車の通るすぐ横にまで歩いて行くので、もしかしたら彼女もか、と思わせられた。

 次のシーンは、田舎で二人の老女(実母と下宿人ジェシー)が話している。と、玄関に物音。ネリーが帰還したのだ。ハグしたあと、ネリーはウルフのいる部屋へ。しかしこの二人の会話はかみ合わない。

 翌日、実母は教会へ。途中、医師に出会うがもう元気だと答えている。そして目をやると、ネリーとウルフが手を携えて向こうへ歩いて行く。

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