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【こんな映画でした】150.[ガラスの城の約束]

2022年 2月22日 (火曜) [ガラスの城の約束](2017年 THE GLASS CASTLE アメリカ 127分)

 先だって観た[ショート・ターム](2013年)のデスティン・ダニエル・クレットン監督作品。ブリー・ラーソン主演も同じ。4人姉弟の次女役か。父親レックス(ウディ・ハレルソン、撮影当時55歳)が最も愛していたのがこのジャネットのようだ。あと姉のモーリーン、弟のブライアン、妹のローリー。母親ローズマリーにナオミ・ワッツ(撮影当時48歳)。

 観ていて辛い映画であった。実話に基づくということで、ラストシーン、映画本編が終わった後に、この「モデル」たちの撮影された写真と映像が紹介されている。それによると父親は1934年生まれで1994年に亡くなっている。いかつい大柄の男性である。演じたウディ・ハレルソンは雰囲気が似ているようだ。

 父親だけが問題なのではなく、まさに夫唱婦随で、母親もネグレクト風でどうしようもない人間であった。お終いの方でジャネットが母に父と離婚してくれと頼むのだが、「できない」、と。彼ら夫婦二人は、彼ら二人で完結している、その意味で良い夫婦だったのだろう。

 だから子どもたちは苦労することになる。四人が鳩首して、力を合わせてこの家を出ていこうと誓い合っているシーンもあった。要するに愛していてはくれているが、生活能力がないために、日々空腹であり(まさしく「アイムハングリー」と言っている)、いわゆる教育も受けさせてもらえてないという状況なのだ。

 映画はフラッシュバックが多用されて進んでいく。ボロボロの家に、ボロボロのクルマ。着ている服ももちろん質素である。一体どうしてこのような生活をするのか。その主張・理念については、オープニングシーンでもナレーションとして流れてはいるのだが。

 つまり金持ちの豊かな生活の有様を拒絶して、自然の中で質素に暮らしていこうというもののようだ。それでも子どもたちには夢を語る。原題にあるように「ガラスの城」と名付けたみんなで暮らせる家をいつか作ろう、というわけである。作中、何度もその設計図を前にレックスがジャネットたちに話すシーンがある。

 映画の半ばになってようやく父親レックスの本質的な問題が明らかになってくる。アル中なのだ。わずかしかないお金を、食料を買いに行ってくるとして、飲んでしまうのだ。あげく、後ではジャネットの貯金箱からもお金を取って酒に変えてしまうのだった。このような人物は残念なことに、どこにでもいる。

 父親レックスは、その親子関係にいびつさがある。特に母親との母子相姦的なニュアンスが感じられる。その反面、子どもたちというか家族に対する支配欲は強烈で、常に自己の支配下に置いておかないと気が済まないようでもある。それは愛情の裏返しでもあるが、基本は安定した愛情生活を送って来れてないことからくる不安と不信なのだ。だから常に拘束し、自分への愛情を確かめてないではすまない。いずれ子どもたちは独立していくのに、それも許せない。

 そのような人間にひたすら追従していけるのは、彼と結婚した伴侶だけなのだ。彼女は子どもたちのことは二の次で、何より夫が第一。もちろん思想というか、その人生観が一致してなければそのような偏屈な人間と生活を共にすることはできないだろう。

 いま一つ分からなかったことに、父親は貧しいようであったが、母親の方はその親戚から残された遺産として100万ドル相当の土地を保有していたらしい。ところがそれをお金にして使うことに夫が反対していたようで、そのため子どもたちはずっとひもじい思いをしなければならなかったということが、ジャネットが大人になってから、母親が彼女に話すのだった。

 そのときの驚きと失意は想像を絶するものだ。親への不信感は、ついに愛情への不信感ともなり、家族というものへの信頼感をなくしてしまうほどのものだった。もっとも下の二人は、そこまで深刻に考える年齢ではなかったということで、救われてはいたのだが。上の二人はもろにその犠牲となっていたわけだ。とまれ辛い話であった。原作は翻訳されている。

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