【こんな映画でした】140.[愛と精霊の家]
2021年 3月31日 (水曜) [愛と精霊の家](1993年 THE HOUSE OF THE SPIRITS ドイツ/デンマーク/ポルトガル 133分)
この映画は『ヨーロッパニューシネマ名作全史3』(田山力哉 社会思想社 1994年)に紹介されていたもの。ビレ・アウグスト監督作品。二作目。
見終わった今、なかなか歯ごたえのある佳作であったと思う。
少女時代のクララが超能力を発揮することから、この映画は一種のホラーものなのかと思った。邦題でも「精霊」などという言葉を使っているので、ミスリードされてしまう。ここでの話は数十年にわたる。クララの子どもの頃から、その死まで。物語はその死からもう少し先まで進むのだが。歴史に翻弄される一家・一族の歴史を描いたものと言える。
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小作の人たちをまったく信用せず、酷使するのみの主人公エステバン(ジェレミー・アイアンズ、撮影当時43歳)が、民主主義的な考え方を理解できず、その運動をする人々を迫害・弾圧し、その結果として軍部独裁の政治を招き、自らも上院議員でありながら没落していくというものである。
そのエステバンの妻となるクララをメレル・ストリープ(撮影当時42歳)が演じる。さすがに若妻役の時はちょっときびしい感じではあった。娘はウィノナ・ライダー、撮影当時21歳。[シザーハンズ](1990)で観ている。
それにしてもつくづく思うのは、軍隊というものの存在である。国民を守るためという建前で作られているが、実質は国民ではなく「国家」を守るためであり、そのためには国民の虐殺も厭わないというのが、その本質である。それがここでは如実に描かれている。
この映画の場所は特定されてないが、時は20世紀であり、国名としてアメリカ合衆国やカナダが出てきて、インディオということからするとメキシコか中米のどこかの国を想定しているのかもしれない。なかなか見応えのあるハードな作品であった。
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