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【こんな映画でした】324.[プロヴァンス物語]

2021年11月26日 (金曜) [プロヴァンス物語/マルセルの夏](1990年 LA GLOIRE DE MON PERE MY FATHER'S GLORY フランス 111分)

 イヴ・ロベール監督作品。原題は「わが父の栄光」ということだと辻邦生が『美しい人生の階段 映画ノート'88~'92』(1993年)に書いている。この映画を観ながら、父親にこんなにも憧れというか、尊敬の念を持てるものなのか、と思った。そのように父親を尊敬できるのは、いいことなのかもしれない。それだけまだ平和な時代(年頃)であり、その家庭も平和で幸せに満ちていたからだろう。現実にはなかなか難しいような気もする。

 とまれこの映画(小説)は、マルセルの視点から描かれる。彼の内心の声がナレーションとして挿入されている。父親を斯くも絶対的に尊崇できるというのは、やはり小さい・幼い頃ゆえのものかもしれないと私は思う。

 その父親は無神論者で、ことごとくそのことでぶつかっている。神父とまで。でも最後、その別荘を去って行く時に、その神父が撮った写真をプレゼントされると、得意満面になるのだった。やはり平俗な人間の一人であるということか。それと神父の寛大さも表現しているか。

 さて俳優は父親ジョセフにフィリップ・コーベール(撮影当時39歳、私と同じ1950年生まれだ)。生真面目というか融通が利かない頑固な父親を演じている。母親オーグスティーヌにナタリー・ルーセル(撮影当時33歳)、何とも微妙で美人という美人ではないが、目をひかれる不思議な魅力を持つ。

 あと重要なキャラクターとしては、母の妹ローズ役のテレーズ・リオタール、その夫となるジュール役のディディエ・パン。そして子役マルセル役のジュリアン・シアマカ(撮影当時11歳、映画出演はこの二本が主で、その後のキャリアは見つからなかった。まだ43歳なので存命だろう)。

 マルセル役はもう一人6歳未満の時、父親の教える教室で字を読めたというエピソードで出てくる。そして[マルセルのお城]のラストで大人になったマルセルが出てくるが、こちらは後ろ姿だけで顔は映ってない。

2021年11月27日 (土曜) [プロヴァンス物語/マルセルのお城](1990年 LE CHATEAU DE MA MERE MY MOTHER'S CASTLE フランス 99分)

 上手いものだ。ラストシーンで身体が震えた。。これは「マルセルの夏」の続編というか、第二部というか。フランス映画はやはりシビアであり、けっして安易なハッピーエンドにはしないということ。最後の最後のカットは、亡き母親の若かりし頃のアップ。一瞬、微笑んだあと、それが元の表情に戻るところでストップモーション。私としては最大に微笑んだところでのカットが良かったと思うのだが。

 以下はラストに近いシーンでのマルセルによる述懐。ナレーションとして流れる。

 時は流れる。風車のように、人生の輪を回転させる。5年後、私は車輪の高い黒い馬車の後ろを歩いていた。喪服を身に着け、ポールの手を握りながら母の亡骸を運ぶために。それ以来、大人になるまで母の話をする勇気はなかった。
 ポールは成長し、絹のようなヒゲを生やし、エトワールの丘でヤギ飼いとなった。ウエルギリウスの詩のように。そして30歳で他界した。リリは何年もの間、墓地の下で弟を待っていた。1917年北フランスの暗い森で、額を銃弾に射抜かれ、誰一人知らぬ冷たい茂みの中で息絶えた。
 これが人生だ。一瞬にして喜びが悲しみに変わる。子供に教える必要はない。

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