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好きということ。

 好きということはどういうことだろうか。僕には好きなものが沢山あるけれど、「好き」の意味をよく知らないでいる。好きな人も沢山いる。そのもの、そのこと、その人を考えるだけで楽しい気持ちになって自然と笑顔になれる。それを好きというのだろうか。一つだけ分かるのは、好きには何種類もあること、いや、段階があるということだろうか。やっぱり分からない。自分の好きをいくつか取上げて考えてみよう。

読むこと
 読むことはとても楽しくて好きだ。Amazonや本屋さんで直感に任せて本を買いまくる。ハズレを引くこともあるけど、それもまた楽しい。noteで他の人の文章を読んで気に入れば、スキを押してお気に入りのマガジンに追加する。自分もこんな文章がかけたら良いなとワクワクする。

書くこと
 書くこと、趣味の中で一番好きだ。僕の文章を好きと言ってくれる人達に自分の言葉をお届けしたい。鋭いほどの欲求に駆られて書かずにはいられなくなる。自分の書きたいように書く、こんな自由なことはない。そしてそれを好きだと言ってくれる人達がいる。幸せしかない。

お酒
 バーを巡りながら、星の数ほどある世界中のお酒の中から自分の心がワクワクする味、香り、酔いの回り方の組み合わせを見つけ出すことはとても楽しい。自分で少しずつお酒を集めたりして楽しむことも出来る。

友人
 久しぶりに会う人も頻繁に会う人も、話したり、ご飯を食べたり、お酒を飲んだり、映画を見たりして一緒に時間を過ごすことでとても幸せな気持ちになる。

恋愛対象
 一番ややこしい。急に切なさや辛さが顔を出し始める。片想いなんてしてしまった暁には、振り向いてもらうために滑稽なまでにあの手この手で気を引いて自分の気持ちをアピールしなきゃいけない。「惚れたら負け」という言葉もあるくらいだから、やるせないにも程がある。
 もし振られたら心がバラバラになって壊れる。幸運にも振り向いてもらえて受け入れてもらえたとしても、その先で細かなすれ違いがある度に傷ついたり、ことによっては修復不能になって別れる。関係に傷がついていなくても人生不条理で好き同士で別れることもある。相手がある日突然死んだりもする。全く勘弁して欲しいと思うのだけど、しばらくすると性懲りも無くまた心が勝手に踊り始める。

 こうして書きながらふと思ったのは(そんなんだから読みにくい文章になるんだぞ)、もしかしたら、好きということは何かを自分の中に取り込んで自分の一部にしてしまいたいという欲望なのかもしれないということ。

 文章を読んで気に入った世界観を持つ他人の言葉と表現を取り込んで自分の言葉を形作る。
 沢山あるお酒の中から自分が美味しいと思ったものや、気分に合うものを知識として自分の中に取り入れる。
 友人の人生という限りある貴重な時間の一部を自分のものとして割いてもらう。
 恋愛対象の人の全てを自分の中に取り込みたくなる。でも、そんなこと出来やしない。あっちも人間、こっちも人間。どっちかがどっちかの中に入るなんて、設計ミスのマトリョーシカにも程がある。だからややこしくなる。

同時に逆の欲望も湧く。
自分の言葉で誰かの心を動かしたい。
自分の気分をお酒の味に乗せたいと思う。
限りある自分の人生を貴重な時間を友人のためになら割きたいと思う。
好きなあの人に自分の全てをあげてしまいたいと思う。

何かを自分の一部にしたいと同時に自分もその何かの一部になりたい、そんな最上級の共有願望。

きっと好きってそういうこと。

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きしもと
頂いたお金は美味しいカクテルに使います。美味しいカクテルを飲んで、また言葉を書きます。