介護保険について考える
主人の病気の事は、ごく親しい人にしか話してはいなかった。
私の会社にも、
「難しい病気になって、これから急に休む事もあると思うし、残業もほぼ出来ない」
とだけ報告した。
病名を言ったところで、どんな病気か説明したところで、お互いしんどいだけだから。
フルタイムの時給社員だったので、仕事は行かないとお金にはならなかったけど、融通はきいた。いろいろいい加減な所もあったが、そこは本当にありがたかった。
主人の状態を包み隠さず話した人の中に、中学時代からの友人がいる。
もう半世紀近い付き合いになろうとしてて、途中、お互い多忙で何年も会わない時もあったけど、会うとその瞬間から普通に友達に戻れる。そんな相手。
彼女は母親が認知症を患っていて、介護の為もあって早期退職していたのだけど、結局はお互いの為にならないと、施設への入居を決めた。
その施設がたまたま我が家の近所だった事から、時々会うようになっていた。
彼女がよく私に言ったのは、
「介護は早めに準備して、早めに対応する事」
「介護される方ではなくて、介護する方の都合を優先する事」
だった。
そして自分が役所に行ったついでにと、介護保険の資料をもらって来てくれたりもした。
おかげで公的サービスについての情報も知ることが出来たし、何よりいずれお世話になる時の心構えが出来たと思う。
使う、使わないは別にしても、知っておくという事は大事だと思った。
2月に入った頃から、主人は何をするにも手助けが必要になっていた。
トイレはもう無理だし、着替えも怪しい。ズボンに腕を通したりするし、ボタンはもうとめられない。服もしょっちゅう汚す。
でも何とか食事はひとりで出来たし、留守番も出来た。
風呂も見守りは必要だったけど、自分で湯船に出入り出来てた。
正直、これくらいなら頑張れる。
この時はまだそう思っていた。