季節社/中原邦彦
羅冠聡(ネイサン・ロー)だけでなく、周庭(アグネス・チョウ)も指名手配されることになった。パスポートを取り上げられて、巨大な監獄のような香港から一歩も出られないという状況に比べれば、指名手配の方がずっとマシなのではないかと思う。とはいえ、「一生追われることになる」などと脅しをかける権威主義政権の横暴には嫌気がする。 周庭さんにせよ、羅冠聡さんにせよ、あるいは黄之鋒(ジョシュア・ウォン)さんにせよ、それほどの「罪」を犯したのだろうか? なぜ権威主義政権は、善良な市民を迫害する
「幸福が、人生の究極目的である」とか「幸福が、社会の究極目的である」と主張すれば、「それは違う。幸福よりも尊いものがあるはずだ」という反論が起こることと思う。しかしそうした反論をする以前に、そもそも幸福とは何であるかということについての理解が一致していなければ、議論が噛み合わないだろう。 幸福の定義を「快楽説」「欲望実現説」「客観的リスト説」の三つに分類することが定着したのは、イギリスの哲学者デレク・パーフィットが著した『理由と人格』(1984)の影響によるものとされている
二〇二二年に『いまここの「幸せ」の話をしよう』という本を書いたのだが、ほとんど読まれていないし、これを読んだ少数の人たちにも理解されていないのではないかと思う。この本は、幸福についての「心的調和説」──もっと正確に言えば「欲望整合説」──の立場で書いたのだが、そんな立場は現代哲学では存在を認められていないのであるから、理解されていないのは当然と言えば当然のことである。 現代の分析哲学においては、幸福の哲学的分析は「快楽説」「欲望実現説」「客観的リスト説」の三つの立場に大きく
最近のAIの進化のスピードは凄まじいものがあって、仕事を奪われる人がかなり大勢出てくるだろうと思っている。並以上の能力を持つ人間よりも、AIの方が頼りになる時代がすでにきている。 翻訳については、DeepLの時点でそこらへんのプロの翻訳者よりもAIのほうが頼りになる存在になっていた。僕はプロの翻訳者に「DeepLの方が優秀」と告げてショックを与えてしまったことがある。しかし本当は「DeepLのほうが10倍くらい優秀」と言いたかったのを我慢して少し控えめな表現にしていた。
先日、ニューズウィークで「『独裁者を任期制』にする国際法を真剣に考える時期にきている」という記事を読んだ。書いたのはカウシク・バス(KAUSHIK BASU)というインド出身の経済学者。 「独裁者は当該国だけの問題ではない。世界中に波紋を広げ、万人の利益に反するからこそ、各国元首の任期を世界統一基準で縛る国際法が必要」というのがその主張の根拠だ。プーチンの起こした戦争を考えてみれば、この主張はもっともだ。独裁者を任期制にする国際法をつくるというのは、良いアイデアだと思う。任
カナダのHOC DOCSドキュメンタリー・フェスティバルで、羅冠聡(ネイサン・ロー)を描いたドキュメンタリー『Who’s afraid of Nathan Law?』が上映されます。「21歳で革命リーダー。23歳で立法会議員。26歳で最重要指名手配者。香港の雨傘革命のリーダーたちに密着し、世界で最も有名な反体制派の1人であるネイサン・ローが、大国を相手に民主化を求めて戦う姿を描いた作品です」 ディレクターは『ジョシュア:大国に抗った少年』と同じジョー・ピスカテラ。黄之鋒(ジ
初めに言っておくと、この本はまだ発売されていません。しかし僕が翻訳して出版する本なので内容を知っているのです。昨日、製本された見本が届きました。 中央の黄色は、香港の民主化運動のシンボルである雨傘です。白と黒の縞々は横断歩道です。しかしそうした日常的な街の風景が、自由を抑圧する鉄の檻へと変わってしまう様子を、表紙のイラストは表現しようとしています。香港という都市が、巨大な監獄へと変貌してしまうということです。 メインの著者である羅冠聡(ネイサン・ロー)さんは、周庭(アグネ
いよいよTwitterがダメかもしれないということで、移行先としてnoteを試してみることにしました。noteには4年ほど前に適当に書いた記事があったので削除しました。読み返していないけど恥ずべきものだった気がします。 4年前に書いたと思われる自己紹介がこんなふうになっています。 いまの関心はもっと政治的なところに向いています。権威主義が台頭する最近の世界において、どうやって自由を擁護していくのか──最近の関心はここに向いています。 香港の民主化運動。これは2019年に