黄蝉スオウ@のんびり小説noter

出戻り系オリジナル小説書き。久しく創作活動から離れていましたが、noteでのんびり再開することに。昔々書いていたお話のデッドストックを公開しています。今後は新しいお話も載せていきたいなぁと、鋭意執筆中。

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出戻り系オリジナル小説書き。久しく創作活動から離れていましたが、noteでのんびり再開することに。昔々書いていたお話のデッドストックを公開しています。今後は新しいお話も載せていきたいなぁと、鋭意執筆中。

マガジン

最近の記事

見出し画像作りに愛用中、画像変換アプリ【Waterlogue】

こんにちは、黄蝉スオウです。 ずいぶんと前のこと、それこそnoteを始めたばかりのころに、自らこんなツイートをしていました。 思いついてから4か月も経ちましたが、いまだ愛は衰えず。 というわけで、いつもnoteの見出し画像を作る際に利用しているiOSアプリ「Waterlogue」を自分なりに紹介します。 画像を水彩画タッチに変換できるiOSアプリ、Waterlogue 見出しのとおり、Waterlogueの主な機能は「写真などの画像を水彩画風に変換する」こと。 世に出てい

    • 作品紹介

      こんにちは、黄蝉スオウです。 2019年2月にnoteを始めてから、過去に書いた文章の再掲ではありますが、週1のペースで楽しく更新し続けてきました。 それもこれも、これまで拙作を読んでくださったり「スキ」してくださったりした皆さまのおかげです。ありがとうございます。 それぞれのお話は短いものの、掲載数が増えたので、発表済みの作品をあれこれと分類&紹介し直してみることにしました。 初めましての方も、お好みに合いそうな作品があれば、ご一読いただけると幸いです。 「スキ」の多い

      • エンター・ザ・セルフ・ケイジ

        「なー、あれの面白さ、わかるか?」 高校生の休み時間はいそがしい。体操服に着替え、古文の宿題を写し、早弁をかきこむ。時には忘れた英和辞典を求めて走ることだって必要だ。今の自分も例にもれず、四時限目の生物で眺めるだろう図録を借りに、八組へ来ている。 川原(かわら)は俺の指さす方向をしげしげと見つめた。答えとともに、引き出しから現れるはずの図録を待つ。斜め前からメンチカツサンドのにおいが漂ってくるが、気にしてはいけない。 「……わからん」 「そうだよなぁ」 近ごろ一年女子の間で、

        • スリー・ミニッツ・カラフル・コード

          一 薄暗い。ほこりっぽい。降水確率ゼロパーセントの晴天の下、わたしたちは体育倉庫につめこまれている。 カゴいっぱいのバレーボール。古めかしい跳び箱に、器械体操用のマットレス。蛍光ピンクがまぶしいゼッケン、ラバーの端がはがれかけた卓球のラケット、無数のピンポン玉。いつも収納されている運動用具たちは、すべて裏手のグラウンドへと運ばれていた。 すっかり覚えてしまった五線譜にもう一度目を通す。時折ふるえる電灯の明かりを頼りに音符をながめていると、弾きなれたピアノの音でメロディが流れ

        マガジン

        • a chorus of silent cicada
          3本
        • 再録集:色葉言葉
          7本

        記事

          夢のあいだの満ち引きに

          眠りに落ちる直前に、例えようのない浮遊感を味わうことがある。現実の世界を抜け出す瞬間は、ジェットコースターが頂点から駆け降りる数秒に似ている。下るにつれて、思考回路がじょじょに動きを止めていく。 ああ、また「あれ」だ、落ちる、落ちる……感覚に身をまかせれば、いつも引き潮の早さで意識を持っていかれる。昨日の夜もその前も、変わることのない真夜中の海。内なる海は今晩も、生あたたかい眠りへと僕をいざなうはずだった。 足の裏に全体重がかかっている。ということは、立っている。僕は自室の

          夢のあいだの満ち引きに

          とまる、かわる、つづく、つづく

          駅の改札を抜ける。階段を降りて、右へ。駐輪場のフェンスに沿って大通りまで出たら、一本奥の脇道に入る。コンクリートブロックと、昔ながらの生垣に挟まれた静かな路地を通り過ぎると、幹線道路を横切る大きな横断歩道に出会う。去年まではここで時々、待ち合わせをしてた。 信号が青に変わる。鳥の鳴き声が響きだす。みんなの歩みに流されて前に進むと、左手にセブンが見えた。今まで、あのセブンでいくら使ったんだろ。 三年間通い続けた道は、足がリズムを覚えてる。ここに信号、あそこに本屋、どこまで行った

          とまる、かわる、つづく、つづく

          絶対明度(後)

          いつも気にして欲しいのに、気付かれたくはないとか。 ずっと話してたいのに、言葉は見つからないとか。 目が合えば嬉しいのに、すぐに逸らしたりとか。 素直になれなくて苦しいのに、全然平気なフリしたりとか。 「寝すぎ」 「ウルセー……ひっさびさの朝練で眠いんだよ」 「普段、やってないもんねぇ、早瀬は」 「………」 机に上半身だけ寝そべっている俺の目の前で、河原はにっこりと笑った。 やっぱ、コイツと腐れ縁にでもなったら、どうすりゃイイんだ? あり得ねぇよ。 そんなどーでもいいコト

          絶対明度(前)

          腹の底から込み上げる笑いに、どうしようもない状況。 その只中に、俺は居た。 よくよく思い返してみると、こんな晴れた日は久々で。 いつもならサボりたくなる……いや、大抵サボっちまう朝練でさえ、真面目に出てやろうかという気持ちになる。ただ天気がイイ、それだけのことなのに、我ながら単純。 でも見回した限り、思ってるコトは多分みんな同じだ。 それぐらい、今日は文字通り清々しかった。頭上を見上げれば雲一つ無く、空が視界いっぱいに広がり切って爽快感は格別。 昨日窓越しに伺えた、黒雲から

          はじまりのうた。Side. 凪人

          蝉、うるさいな……。 そう思いながら歩いていた。 まだ夏季休暇に入ってはいないけれど、連日の暑さに負けた教授達は、ほとんどの講義を終わらせるか休講にしてしまっていた。 そんな中、今日も元気だ夏バテ知らずの教授約一名は、この猛暑にもめげず何故か唯一クーラーのない教室で講義をして下さっている。 そして現在、俺はその講義を中抜けしてキャンパス内をうろついている。理由なんて立派なモノはない。単なる気分。 これも、理由になるのだろうか。 ふらふらと教室を出て、やたらときしむドアを閉め、

          はじまりのうた。Side. 凪人

          はじまりのうた。Side. 波人

          あー、あっぢぃなぁ全くよぉ。 しかも突然休講ってのはどういうことだ? んっとに。 まぁ、どうせ休講なんてねーだろとか思って掲示板をチェックしてなかった俺も俺だけど。 今は夏季休暇直前。講義はほとんど終わってっから、キャンパスにも人はまばらにしかいない。 そんな中、補講があると思って慌てて来たっつーのに、見事に休講だった。「補講」の意味。 暑い。暑い暑い。暑い暑い暑い暑い…………。 っていうか、こんな真っ昼間に思いきり日向歩いてる奴なんて俺しかいねぇよ……。 馬鹿か? 頭の

          はじまりのうた。Side. 波人

          ひかりのコトバ。

          ——君に。 僕が贈りたかった言葉はたった……ひとつ、だけ。 僕は何時から、ここで何をしているんだろう。 何時の間にかここにいる。 何時の間にかここに在る。 毎日の区切りさえもう曖昧になっていて、一日が二十四時間だったとか、一週間は七日だったとか、きっと当たり前だったはずのことももうどうでも良くなっているんだ。 全てが僕の傍らを通り抜けて、すり抜けていく感触がする。 僕には何も掴めなくて、だから何も持たないままにただ佇むことしか出来なくて、ずっとそのまま。 どうしてか、って?

          狂花舞姫

          夢をみて  時をみて 過去をみて  現在をみて 全てを失くした  カラッポの僕が それでも覚えていることがあるんだ 「綺麗だねぇ」 そう言って、浅く溜め息をつく。 まだ大人になりきれない、少女が一人。 黒く真っ直ぐな髪が肩口で揺れる。 覗く、白い首。標準よりも、小柄で。 長い睫毛のついた瞳をぱちぱちとさせて、もう一度。 「綺麗だねぇ」 桜色の花びらが、舞い踊る。 「スゴイでしょ? 来て、良かったね」 彼女は言った。次いで、微笑む。 その表情と、付随する声。 彼は、それが好

          Let me call YOU.

          「はい、もしもし」 『あっ……もしもし?』 「何か嬉しそう」 『そうかぁ? ……別に変わったことは無いんだけど』 「誤魔化してもイイことないよっ」 『……ほんとに何も、無いってば……』 今こうして細い細い目には見えない線で、君と繋がっていることを本当に不思議だと思う。 部屋の中、電気を消す。誰かが弾く調子っぱずれのピアノ曲を聴こうと耳を澄ましてみる。そうすると、必ず私のケータイ画面が痛い程に眩しく光る。 着信を告げるライト。表示される名前。三秒黙って眺めた後、平静を装って電

          砂の城

          「……何してるの?」 少女が一人、何も無い虚空に向かって小さく礼をしていた。白い両手が胸の前でぎこちなく組まれている。 中学への通学路にあるここは公園だ。その砂場にいる少女の足元にはお山。トンネルを開けようとして失敗したのだろう、頂上から派手に崩れていた。 「……おいのり」 微かだが、弱くはない声が返ってきた。小柄な身体つきによく似合う、小さくて高い声。けれど体勢はそのままに、微動だにしない。 妙といえば妙な、しかし見過ごすことも出来た状況に、思わず声をかけてしまったことを

          未確認リトマス

          それは柔らかな雨が降る梅雨の一日だった。 しとしとと落ちる滴が道に咲く紫陽花を紅に青に濡らして、鮮やかな葉の緑がどす黒く塗り変えられた、そんな日だ。 身体が空腹を訴える四時間目、向かった先は第一実験室。薬品の匂いにつんとする嗅覚、硬い廊下を歩く複数の靴音、机に無造作に置かれてゆく教科書の束。真っ黒な机と明度の高い床とのコントラストが目に痛くて、教室から目的地へと伸びる廊下を歩く間に低彩度の空間に慣れてしまった僕は、思わず瞬きを繰り返した。 第一実験室では班別に座る場所が決ま

          モノクローム

          寒い。 ……ただ、ただ、寒い。朝補習ってのはこれだから、イヤなんだよなぁ。 あーあ、道路なんか霜で白っぽくなってる。息も、吐き出した途端凍っちまいそうだし。 お願いだから、こんな時期にガッコなんか行かせないでくれよ。この季節にはいつも、こう思うけれど……今年に限っては、どうもそればっか言ってらんない。 ずっと自分をはぐらかしてきたけど、そろそろマジにならなきゃ実はヤバイ。 だって、もうすぐ受験本番。 大学に行って、モラトリアムを増やす。 不謹慎だけれど、確かにそれが現在の俺の