エンター・ザ・セルフ・ケイジ
「なー、あれの面白さ、わかるか?」
高校生の休み時間はいそがしい。体操服に着替え、古文の宿題を写し、早弁をかきこむ。時には忘れた英和辞典を求めて走ることだって必要だ。今の自分も例にもれず、四時限目の生物で眺めるだろう図録を借りに、八組へ来ている。
川原(かわら)は俺の指さす方向をしげしげと見つめた。答えとともに、引き出しから現れるはずの図録を待つ。斜め前からメンチカツサンドのにおいが漂ってくるが、気にしてはいけない。
「……わからん」
「そうだよなぁ」
近ごろ一年女子の間で、