掬い上げてくれた人

今日は不思議な日。
今はもう話せない人の名前で着信が来た。

今でも忘れない。
彼がいなければ、今の私はいない。

30歳、仕事をなくし、帰る場所を捨て、将来を誓ったはずの相手からも逃げて、休まらず、怯えながら過ごす日々。

あのまま人生が終わっても良かった。なぜ死ねないんだろうって思っていた。


でも、そんなときに出会った彼が、私を引っ張り上げてくれた。

どこか少年のようなあどけなさがあって、人が大好きで、ビールが大好きで。
落ち込む度に飲みに行って。
売上が良くても飲みに行って。
そのうち飲み潰れるようになって。
憎めない彼の性格に寄り添う仲間も多かった。

彼のおかげで新しい仲間ができて、私も人とまた接することができるようになった。

夏のサンシャイン、年末年始のプリズムホール、今はなき幕張のヒーローワールド、横須賀の市民会館、秋葉原の体育館etc‥
色んな場所でたくさんの子どもたち、大きなお友達と出会って、多くの笑顔と感謝の言葉に触れ合った。

キャストからダメ出しもらったこともあったけど、今はそれも良い思い出である。

『時々思い出してくださいね』

電話越しで聞こえる彼の親しい人の涙。

忘れたことはない。
忘れることはない、この先も。

病気のことを親や友人にも言わず、最後までカッコつけようとして。
飲みに行こうって約束したのに、嘘つき。

いつか会ったら面と向かって言ってやる。

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