【ショートショート】秋の空時計
付き合って三年もたつと周りからお互いに相手に飽きたりしないの、なんて聞かれたりするけど、愁子と付き合ってそんなことを思った試しがない。いつだって彼女は新しい色を僕に見せてくれる。
いつものオープンカフェで彼女が差し出してきたのは僕の誕生日プレゼントだった。一見シンプルな腕時計。でも盤面を覆うカバーガラスには複雑な加工が施されていて、見る角度を変えると反射が変わって複雑な色に変わって見える。
「ど、どうかな……。一生懸命選んでみたんだけど」
わずかに眉根を寄せて不安そうな表情を見せる。僕がにこりと微笑むと、うって変わって喜色満面といった表情になる。それが楽しくて僕は思わず笑ってしまう。
まるで秋の空のようにころころと変わっていく彼女の表情を見るのは、とても楽しい。
「そうだね、これは秋の空時計って名付けようかな」
「ん、なんで」
「それは秘密」
笑いながら見上げると、どこまでも続いていきそうな空が晴れやかに広がっていた。
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