交流分析(TA)の基礎知識 ゲーム分析
久しぶりの交流分析。今回は「ゲーム分析」についてです。
まず交流分析とはなんぞやってやつですが、以前の記事で書いてるので、ここでは軽く書きます。以前の2記事では主に「エゴグラム」について書いています。
交流分析(Transactional Analysis, TA)は、1950年代後半にアメリカの精神分析医エリック・バーン(Eric Berne)によって提唱された心理学理論および心理療法です。人間の性格やコミュニケーションを分析し、改善するための方法として広く用いられています。
交流分析の主な要素
自我状態(Ego States):人間の心の中に存在する3つの自我状態(親、成人、子供)を分析します。
交流パターン(Transactional Patterns):人と人とのやり取りのパターンを分析し、コミュニケーションの質を向上させます。
ゲーム分析(Game Analysis):無意識に行われる心理的なゲームを分析し、より健全な交流を目指します。
脚本分析(Script Analysis):人生の初期に形成された無意識の行動パターンを理解し、望ましい方向に変えることを目指します。
3つの交流パターン
①相補的交流(Complementary Transactions)自我状態が互いに一致している場合の交流です。例えば、親の自我状態(P)から親の自我状態(P)へ、または大人の自我状態(A)から大人の自我状態(A)へのやり取りです。このパターンはスムーズで、誤解が少ないため、コミュニケーションが円滑に進みます。
➁交叉的交流(Crossed Transactions)自我状態が一致せず、交差している場合の交流です。例えば、大人の自我状態(A)から子供の自我状態(C)へのメッセージが送られた場合などです。このパターンは誤解や対立を引き起こしやすく、コミュニケーションがうまくいかないことが多いです。
例1:息子が「切符をなくしちゃった。どうしたらいいかな」と冷静に対処を求める質問をしたとき、母親が「なんでしっかり持ってないの!」と責める反応をする場合。この場合、息子は大人の自我状態(A)からの反応を期待していましたが、母親は親の自我状態(P)からの反応を返しています。
例2:妻が「今日遅くなるなんて知らなかった。ちゃんと教えてよね」と言ったとき、夫が「突然の残業で、しかたなかったんだ。それくらい分かれよ!」と反論する場合。この場合、どちらも親の自我状態(P)からの反応を期待していましたが、実際には子供の自我状態(C)からの反応が返されています。
③裏面的交流(Ulterior Transactions)表面的には一つの自我状態からのメッセージが送られているように見えますが、実際には別の自我状態からのメッセージが隠されている場合の交流です。例えば、表面的には大人の自我状態(A)からのメッセージのように見えても、実際には子供の自我状態(C)からの感情が含まれている場合などです。このパターンは複雑で、誤解を招くことが多いです。
例1:姑が「百円ショップでこんな便利なものを見つけたの。二つ買っておいたから、一つあなたにあげましょうか?」と言った場合、表面的には親切な提案のように見えますが、実際には「私を褒めてほしい」という心理的なメッセージが隠されています。
例2:上司が「君の意見は参考になるけど、今回は別の方法で進めることにした」と言った場合、表面的には意見を尊重しているように見えますが、実際には「君の意見は採用しない」という心理的なメッセージが隠されています。
次に今回のメイン「ゲーム分析」です。
日常でけっこうやっちゃってるし、やられています(^^; ほんと、嫌ーーな感じになる心理ゲームです。
ゲーム分析
ゲーム分析は、交流分析の一部であり、無意識に行われる心理的な「ゲーム」を分析する手法です。これにより、トラブルの発生しやすい交流パターンを理解し、より健康的な人間関係を築くことを目指します。
ゲームは、以下のような特徴を持つ交流パターンです。
反復性:同じパターンが繰り返される。
隠れた動機:表面的な理由とは別に、無意識の動機が存在する。
予測可能な結末:ゲームの結果は予測可能であり、しばしばネガティブな結末を迎える。
ゲームの公式(ゲーム方程式)
エリック・バーンは、ゲームの公式(ゲーム方程式)を提唱しました。これにより、ゲームの構造を理解しやすくなります。
仕掛け人:ゲームを始める人。
餌:仕掛け人が相手を引き込むために使う手段。
罠:相手が反応するように仕掛けられた状況。
結末:ゲームの結果として生じる感情的な反応。
ゲーム分析の代表的な項目
①世話焼き 相手のお世話をすることで、相手を支配しようとするコミュニケーションです。例えば、後輩に聞いてもいないことをあれこれと教えることで、自分の方が上だと見せしめる行動です。
➁さぁつかまえたぞ! きつい言い方やかかわりで、自分のほうが上位であることを示してくるコミュニケーションです。例えば、職場で些細なミスを大勢の前で厳しく注意する行動です。
例・ある職場で、上司が部下の些細なミスを大勢の前で厳しく指摘することが頻繁にありました。この上司は、自分の権威を示すために部下を攻撃する「さぁつかまえたぞ!」のゲームを仕掛けていました。部下たちは次第に萎縮し、ミスを隠すようになり、職場の雰囲気が悪化しました。
③はい、でも(イエスバット) 相談を持ちかける形で仕掛けてきますが、こちらが良かれと思ってアドバイスをしても、何らかの理由をつけてそのアドバイスを拒否する行動です。
例・家庭内で、夫が妻に対して「どうすればもっと家事が楽になるか」と相談を持ちかけました。妻が具体的なアドバイスをすると、夫は「はい、でもそれは難しい」と否定的な反応を繰り返しました。これにより、妻は次第にアドバイスをする気力を失い、夫婦間のコミュニケーションが減少しました。
④値引き(ディスカウント) 他人からの提案や評価をあえて否定することで、自分の価値を落とす行動です。例えば、「~だから出来ません」と言って、自分の能力を低く見せる行動です。
⑤キックミー 自分を被害者として見せることで、他人からの同情や助けを引き出そうとする行動です。
⑥仲間割れ グループ内で対立を引き起こし、他人を巻き込むことで自分の立場を強化しようとする行動です。
⑦苦労性 自分がどれだけ苦労しているかを強調することで、他人からの評価や同情を得ようとする行動です。
例・友人の一人が常に自分の苦労話を強調し、他人からの同情を引き出そうとする「苦労性」のゲームを仕掛けていました。周囲の友人たちは最初は同情していましたが、次第にその話に疲れ、距離を置くようになりました。
⑧決裂 意図的に対立を引き起こし、関係を断ち切ることで自分の立場を守ろうとする行動です。
⑨大騒ぎ 小さな問題を大げさに騒ぎ立てることで、他人の注意を引き、自分の存在感を示そうとする行動です。
⑩あなたのせい 自分の失敗や問題を他人のせいにすることで、自分の責任を回避しようとする行動です。
ゲームパターンを回避するためには
自分のパターンを認識する
まず、自分がどのようなゲームパターンに陥りやすいかを認識することが重要です。自分の行動や反応を客観的に観察し、どのような状況でゲームが始まるのかを把握しましょう。
自我状態を理解する
交流分析では、親、成人、子供の3つの自我状態があるとされています。自分がどの自我状態で反応しているのかを理解し、特に「成人」の自我状態を活用することで、冷静で理性的な対応が可能になります。
自己肯定感を高める
自己肯定感を高めることで、他人からの評価や反応に過度に依存しないようになります。自分の価値を認め、自信を持つことが重要です。
コミュニケーションスキルを向上させる
効果的なコミュニケーションスキルを身につけることで、ゲームに巻き込まれにくくなります。具体的には、アサーティブなコミュニケーション(自分の意見を尊重しつつ、他人の意見も尊重するコミュニケーション)を心がけることが有効です。
感情のコントロール
感情的になりやすい状況では、深呼吸や一時的な離脱などで冷静さを取り戻すことが大切です。感情に流されず、理性的な判断を心がけましょう。
他人のゲームに巻き込まれない
他人がゲームを仕掛けてきた場合、それに反応せず、冷静に対応することが重要です。相手の意図を見抜き、適切な距離を保つことが有効です。
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ゲーム。日常的にやってるなと思えるのばっか。自分もやってるし、やられてもいる。なんか、嫌ーーな感情が残ったら「これってゲーム?」って疑ったほうがいい。人間二人いれば、何かしらのゲームをしてるとも言えそう。
自分の自我状態がいまどこにあるかを把握するところからかな。
親(P)・大人(A)・子供(C)の三つのなかで、交叉や裏面交流になってると嫌ーーな気分になる。冷静にAの状態に修正していけたらいいんだけど、そこは人間だからねーーイラッとすることもある。そういう時はいったんその場から離れるのがいいと思う。リセットして頭を冷やすのがいい。
交流分析は職場の人間関係の円滑化に使われたりしてる。エゴグラムテストをして自分の自我状態を把握したり。やったことある人、いるかも。
うつ病やうつ期の状態で言われるのが、50㎏のリュックを二個、背中側と前に背負ってる状態と同等ってやつ。下ろすことの出来ない合計100㎏の重りを常に背負っているわけで、そりゃあ立っているのもしんどいし、風呂もトイレもしんどい。
当然っちゃー当然なんだけど、知識のない周りの人たちにはそのリュックが見えない。いったん知識を得たとしても常に視覚化されてるわけじゃないから、心無い一言をぽろっと言ってしまう。
うつ病やうつ期の人は、自分や相手の交流パターンを知ったり、自我状態を察知したりして、自己肯定感を上げる作業をしたらいいかも。
なにせ他人からの評価や反応に敏感で自己卑下しやすいから、他人のゲームに乗せられやすくなってるし、自分もゲームを仕掛けがち。
自分が安心できる空間と時間をしっかり確保して、劣化してるバッテリーの充電につとめるのがいいと思う。一人の時間って大事だね。
まわりで反復性のある嫌ーーな事象が起こってるとしたら「これってゲームかも?」と疑ってみるといい。ゲームと認識できるとAが働いて、ちょっと冷静な目で見られる。反応を意図的に変えたり距離を置いたりと、感情に振り回されずにすむかもしれない。
「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる」と、エリック・バーンも言ってることだしね(笑)