春日狂想
愛するものが死んだ時には、
自殺しなきゃあなりません。
愛するものが死んだ時には、
それより他に、方法がない。
幸せっていうのは何だっけとこさちに聞いたことがある。
幸せを呼ぶと書いて呼幸、綺麗な名前だと思う。
「私が思うにその質問をした以上幸せについては漠然とわかっているんですよ。
例えばやかんについて聞くとき『やかん』ってものは分かってて聞くんです。
『やかん』すらわからない人は質問にやかんなんてつけないし質問も成り立たなくなるんです。
だから幸せとは何かと聞く人はもう答えが実感としてあるんです」
「幸せっていうのは実感です。 嬉しいとか悲しいとかその時の感情が幸せとなるんです。 心境なんですよ。
思うに幸せとは何か? なんて質問をする人は幸福に幻想を抱きすぎです。
幸福も賞味期限あり、いつしか冷めていくものです。
永遠の幸せとかそんなものを探している人は入信を強く勧めます」
◇
反復なんだよ、と彼女は言った。
「同じ小説を2回読んだら発見はあると思うけど新鮮さはもうないよね。 読者が求めているのは新鮮さを見る反復を欲しがっているんだよ。
めでたしめでたしのその先なんてみんな気にならないでしょ?
シンデレラは王子様と結婚して身分の差に憂いて幸せになれないかもしれないし、元の生活のほうがよかったなんて思い出すかもしれない。
だから幸せな終わりを見たらその先には蓋をするしかない。
もし続くようだったら読むのをやめちゃえばいい。
誰もが幸せになる方法は落としどころを見つけて終わりにさせちゃうことなんだよ」
俺はなるほどと思った。
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