心を解放する旅
旅の充実度はどこで測るのだろう?
食、観光、体験、宿泊、自然、出会い…
自分の中でそれを決定づけるような体験をした。
高知県土佐清水。10月中旬なのに黒潮のぶつかる大岐の浜は、海に入れるほど温かい。
ここに海癒(かいゆ)という宿泊温泉施設がある… 宿泊温泉施設と言うべきか、、少し悩む。
知り合いが宿泊をしたことがあり、以前からおすすめされていたのが頭に残っていた。実はここめがけて高知に行ったわけではなく、徳島県神山町の友人に会いにいったついでに、どこか寄り道をしたく、思い出したのがここであった。その時の話が印象に残っていたのか、宿の名前はすんなりと頭の引き出しからでてきた。
改めてホームページを見ると、何やら文字から伝わってくる熱量のようなものを感じた。突然の連絡だったが、メールをするとすぐに返信をくれる。
「ユニークな宿です。是非おいでください。」
到着するとスラっと背の高いオーナーさんが、みっちゃんって呼んでねと、とてもフレンドリーな対応で出迎えてくれた。
歩いてすぐのところに海があり、山もあり、川もあり。とにかく自然に囲まれている。浜を散歩したり、シュノーケルをしたり、採りたてのウニを食べたり。大自然のなかで心を開放することができる。
海癒では奥さんのたえさんが作ってくれた夕食を、滞在者が一つのテーブルを家族のように囲んで食べる。私が訪れたときはたまたま他に滞在者がおらず、みっちゃんとたえさん、私と彼の4人で食卓を囲んだ。
じっくりと会話をする。 これが旅の充実度のものさしなのかもしれない。
海癒は約20室ある部屋をたった2人で切り盛りしている。中には海癒のコンセプトをあまり理解せずに来てしまった人もいて、サービスが悪いなどとネットに書かれてしまったり、ということもあるそうだ。そんなことも初めて会った私たちに、どうしたらもっとわかりやすく伝えられるかな?と相談をしてくれたりする。
そうやって人を巻き込むことで、まるでこの場所が自分事のようになってくるし、こちらとしてもあくまでも自然に何かしてあげたいという気持ちがうまれる。
ここは宿泊業のサービスというものを最重視しているのではなく、お互いが心地よく過ごす共同の仮の家みたいなものなんだと感じた。
また行きたいな と思うところには必ず人の顔が思い浮かぶ。行きたいというよりは、会いたいという気持ちの方が大きい。まるで遠くに親戚ができたような気持ちになった。