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政治犯が核爆弾基地を占拠して政府をゆすったら ポリティカルファンタジー「合衆国最後の日」
「もしも合衆国が内戦を起こしたら」。ネトフリのオリジナル作品「シビルウォー」のように、政治的な主題で「もし〜たら」を描いた作品を「ポリティカルフィクション」と言ったものですが。
ロバート・アルドリッチ監督の「合衆国最後の日」はまさにそんなポリティカルフィクションでして。
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もし脱獄した政治犯が核爆弾基地を占拠して、政府が隠蔽した議事録の公開を求めたら――。
PrimeVideoで見られるので、早速鑑賞しました。
登場人物は脱獄犯と米国政府要人と軍人。つまり男だけ。舞台は大統領官邸と核爆弾基地だけ。普通に描いたら退屈そうですが。さすが「特攻大作戦」や「ロンゲストヤード」のような男だけの物語を得意とするロバート・アルドリッチ監督。しっかりした脚本とリアルな配役、緩急つけた演出に文句なし。色気ゼロ、男汁が飛び散る画面でも最後まで見せてくれます。
テーマは同監督が描き続けた「弱者のプライド」。
国家の「大罪」を明らかにする証拠の公表を訴え続けた末、殺人の冤罪を押し付けられた元空軍将軍が主人公ですから。
「真実を明かす議事録を公表しなければ核爆弾を敵国に発射するぞ」「発射するな」という駆け引きが延々と描かれるんですが、いわゆる「手に汗握る」展開でして。
閉ざされた空間をスプリット画面で映し出し、観客にしか分からないすれ違いや衝突、騙し合いやトラブルがサスペンスを盛り上げるんです。スプリット画面で一時期ものすごく流行ったけど、これだけ上手に使った映画ってあんまりないのでは。
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「シビルウォー」が現実的でクールな作品なのに比べると、「合衆国最後の日」は熱い。使命を持つ者が身を賭して戦う姿に心打たれます。
ここに乗れるか乗れないかで評価は変わるかも。「こんな人いるわけない」と感じたら駄作でしょうし、「こういう人がいるかも」と信じられたら傑作なのでは。
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個人的には傑作。でも、ここまで使命を理由に生きられる人物が全然リアルじゃない時代に生きてるとは思います。国や民族や仲間のためではなく、とにかく自分が幸せになる(多くの場合、経済的に豊かになる)のがリアルな時代だと改めて認識したりして。
そう。これは「ポリティカルファンタジー」なのかも。
ラストシーンに心打たれるか否かは、この1点にかかっているでしょう。
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ところで刑務所に閉ざされた死刑囚を描いた「終身犯」の主演だったバート・ランカスターを登用したのは、あの名作へのオマージュでしょうか。