君は愛した人に銃を向けられるか、昭和のハードボイルド「赤いハンカチ」
Prime Videoで古い邦画を見るのにハマっちゃってるんですが、この「赤いハンカチ」はトップクラスで「すげえ」かな、と。
「ルパンIII世」ファーストシーズンの初回3回分が好きな人は必見では。いきなり狭いですけど。
ネタバレ有りなんで要注意です。
まず何より桝田利雄監督のシャープな演出。そして、ミステリーがやや甘いとはいえ(だからこそ)ハードボイルドな脚本。愛くるしすぎる浅丘ルリ子の演技に参ります。
冒頭、石原裕次郎と二谷英明が演じるコンビ刑事が、麻薬の売人を追い詰めるんですが、このアクションのキレがいい。
ローアングルで緊迫感があり、リアル。
全編、そのカットに最適なアングルかつ適切なタイミングで切れ代わり、テンポがいい。
容疑者を誤射して死に至らしめてしまった石原裕次郎が辞職し全国を放浪。その間に二谷英明演じる相棒と、撃たれた容疑者の娘(浅丘ルリ子)が結婚しているという、恋愛映画の名作に多い三角関係で生じる緊張感は格別でして。
だって石原裕次郎と浅丘ルリ子は本当は、相思相愛だったんだもの。
挫折と裏切りと葛藤と成就しない恋という、ハードボイルドの必要条件を満たしてるわけですが。
最愛の石原裕次郎を助けるため、夫の二谷英明に銃を向ける妻、浅丘ルリ子。一度は結婚するほど愛した人に銃を向ける。涙も乾く非情さはハードボイルドの真骨頂かと。「殺し屋はブルースを歌う」でしょ?
結局、言葉もなく別れてしまう2人。その身を切るような辛さ。「三人の男」のラストを思わせるこの場面もまた、抱き合いもせず涙も流さず。
そのカッコよさにため息が出ました。
余談ですが、神奈川県立音楽堂やホテルニューグランドなど建築好きが目を見張る場面もあり。
ダムの工事現場でロケという今ではあり得ない場面には土木ファンは震えるでしょう。