不安は怪物
車が大事な人がいた
近所の子供のボール遊びが気になっていた
傷つけられるのではないかと不安だったからだ
どうやら平日の午後にボール遊びが行われているようであった
平日その人は電車通勤であり
車を見ていることはできない
休日になると、その人はドライブへ出かける
あるとき、車に土がついていることを発見した
その人は不安だったものが的中したように思った
ボールが当たったのかもしれなかった
自分の車が大切だったのである
毎晩仕事帰りに車をチェックするようになった
ある晩、また土がついていた
その人は平日の午後に半休をとることにした
子供たちがボール遊びをはじめた
その人は毎日の不安の体積により
こらーと怒鳴ってしまった
妻は驚き、どうしたのかと尋ねた
男は怒りに興奮しながら一部始終を話した
妻は言った
ガーデニングのときに車があたるのよ
不安もまた、怪物であり
幻想である
子供達は怪物に敵意を抱き
なにもしていないのに叱られたと親へ言った
親は様子をみるため
休日ボール遊びが日課となった
休日くらいはゆっくりと思って寝ていると
ポンポンという音がしてくる
絶望のように
その音に休日のたびくだびれた男は
土日は朝そうそうに車で出かけることにした
しかし胸のつかえは取れなかった
いつかは傷つけられるかもしれない
近所の公園ではボール遊びができないことを知らなかったため
公園でやるべきだと思い
話してみることにした
子供の父は
うちは潔白ですという風に振る舞い、男の不安を知ることがなかった
遊び場がない中で、うちの前の道路さえ奪われたのなら、子供たちは一体どこで遊べますか。傷つけたことがないにも関わらず、妙な干渉は止めてもらえませんか、子供たちも怖がっていますので、と答えた
男は
ボールが飛んでこないと、なぜあなたに保証できますか、休日は朝からポンポンボールの音や声が聞こえてきて、本当はゆっくり眠りたいのに、迷惑しているんです。あなたがたの事情はわかります、しかし、こちらの家のことも考えていただきたいだけなのですが。利己的だとはいいません。しかし、どうしますか、車が傷ついたときには。わたしは弁償の口約束をしたいのではないのです。ただ、車が大事なのです。傷がつくことは避けたいのです
と言った
偽善者は
気をつけます。しかし子供の遊び場はお許し願いたい。わたしはあなたのことを考えて、子供を見ていたつもりです。土日は朝しか時間がないため、その時間しか見ていられないのです。なぜあなたはいつも被害者のようにするのですか
わたしはあなたによいことをしました。しかし、それについてもあなたはお責めになる。あまり干渉なさるなら、わたしにも考えが出てきてしまうかもしれません。わたしにも家族がありますから。最近うちの庭になにものかの足跡がついているので、カメラでもつけようかと、妻と考えていたところなのです
不安の人は言った
あなたは、まるでわたしが加害者かのように言います。あなたの庭には一切入っていません。
わたしはただ、不安だっただけなのですが
子供の父は言った
不安とは、なんのことですか
男は言った
車についてです
子供の父は言った
車よりわたしは子供が大事です
近所の第三者がきて言った
なにか、もめているらしいですな
あまり人様の家に干渉することはよくありませんよ
仲良くいきましょう
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