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艶猫娘の七変化(三)

 五時間後。

 南向きの窓に設置したベッドへ横たわる。あらかたの荷物は収納し終えた。夕飯を食べるタイミングもなく、疲れた体を大の字に伸ばす。

「はああ……え、お前、どこから……」

 猫の手も借りたいほど忙しかったのに、肝心の猫はいなかった。ようやく一仕事終えた宗助の股座に、猫が丸まっていた。

(気配がない……)

 宗助は猫が好きではなかった。特に理由はない。

 だが、眼の前の猫には妙に惹かれた。大きな碧眼に黒々とした丸い瞳。脱色したような白い毛は、艶々と輝いている。

 白猫はミャーとも鳴かず、じっとこちらを見ていた。満月の光に部屋は充たされており、神々しい雰囲気が漂っている。

「ずいぶん肥えているな。猫田さん、餌をやり過ぎだろ」

 そっと撫でた後、宗助は白猫を抱きかかえた。猫は大人しく万歳の姿勢になる。ふさふさした毛から、猫のぬくもりがつたわってくる。

 その直後。

「うわ、まぶし……」

 眼の前に強い光が出現した。思わず猫から手を離す。

「なんだ、この感触は……」

 仰向けにひっくり返る。眼を開けた。真っ暗闇である。それなのに、大きなマシュマロのような感触があった。温もりはさっきと同じ。

「ん、なんだ、これは……」

 両手で鷲掴みにして、押し返す。殺人的な柔らかさが指から伝わる。プルンッと押し返す弾力性と吸いつくみずみずしさは、桃肉のようだ。

「甘い匂いが……よいしょ……」

「んっ……」

 聞き慣れない声だった。

「えっ、君は誰?」

 見覚えのない少女が宗助の上に乗っていた。

「って、どうして裸なの?」

 夢でも見ているような錯覚のせいで、現実感がなく、卑猥で淫靡な気持ちは怒らなかった。

「さっきの猫だ。名前は猫田榊という」

 聞きやすい声優のような声が、妙に生々しい。宗助はあわてて両房から手を離した。

(生まれて初めて女の子のオッパイを……)

 情けないことだが、齢十八にして、乳房を揉んだ。童貞とおさらばするには、富士山の麓に到着したレベルである。だが、登頂したいと思っている。

「富士の霊峰と私の胸が関係あるのか?」

 無表情で少女は訊いてきた。

「そうだな。結構、胸が大きいから富士山に例えてもいいと思う」

 感動に打ち震える宗助は、見当違いな回答を提示した。

 だが、榊は顔色も変えない。

「ここは、私のシマだ。お前のような人間ごときと一緒に居れぬ」

 裸の少女は細い腕を伸ばしてきた。絞め殺される、と宗助は身構えたが、両手で頭をつかんでくるだけだった。

 その時。宗助は榊の尻に眼が釘付けで、それどころではなかった。

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